第264話

after story 22
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2022/08/05 14:00



深澤side










共演が決まれば


そりゃその相手との仕事も増えるわけで


秋自信に警戒心があれば少しは安心できるが



阿部「気をつけてよ」

「殺されるわけじゃないんだから」

目黒「でもいい噂聞かないよ、あの女優さん」

「えー、目黒まで心配してくれるの??」



なんて、この通り


警戒心などかけらもない


へらへらと笑いながら出かける準備を淡々とこなす



阿部「あー、着いていきたい」

岩本「自分の仕事あるでしょ」

阿部「でもあの秋このまま行かせていいと思う?」

向井「相変わらず過保護やな」

阿部「いや、だってさぁ」



秋がいなくなったリビングで


不安そうな顔でそう言う阿部ちゃん



「じゃあっ、いってきまーす!」



リビングに顔だけを覗かせて


そういって出ていく秋を


玄関まで見送りに行く



「なに?見送り?珍しいね」

深澤「秋」

「深澤までもういいってー、」

深澤「こっち見て」



いつもと同じ


まあるい目で俺を見て、可愛い顔で笑う



「なに?」

深澤「仕事頑張れ」

「えー、なにそれっ、」

深澤「お前は優しすぎるとこがあるから心配なの」



照れたように笑って


俺の話をきちんと聞いてるのかどうかもわからない


芸能界なんて、自己肯定感の強い人がほとんどだ


どっちかといえば引き気味な秋が


無意識のうちに飲まれていきそうで


てゆうか、そんな未来しか見えない



深澤「秋って、」

「ふっか」



俺が名前を呼んだのに


凛とした声で呼び返してくる秋


しかも、ふっか呼び。


俺が黙るのを知っててやってるんだ


目線の先の秋の目は


真っ直ぐに俺を見てて


それから、ふんわりと笑う



「俺もプロだよ?」

深澤「それでも」

「上手くやるから、大丈夫」



いつも子供みたいな秋だけど


不意に見せるこの大人びた一瞬が


ただただ儚く見えた



マネ「夢野ー、まだー?」



玄関から顔を覗かせたマネージャーに


今行くから!なんて返して


靴のつま先を鳴らしたあと


玄関を開ける



「あ、阿部ちゃんにも言っといてっ、心配しすぎって」



それから、また子供みたいな彼に戻ってから


俺に手を振って玄関が閉まった


何に対してもため息かもわからないまま


その場で大きなため息を吐いた


でも、きっとこれは


完璧すぎる秋に呆れたため息なんだろうと思った




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