第21話

期待させないで
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2021/01/30 02:50
帽子を被って、ジャケットを羽織る
ネクタイを簡単に締めて、仮面をつけた
てつや『まだ肩が痛むけど、動かさなければ大丈夫か...』
今日盗む宝は前にはじめしゃちょーと盗みに行った宝より楽に盗める
てつや『一時間...いや三十分で片付けてやりますか』
りょう「てつや」
てつや「っ、なんだよりょう」
りょう「何度呼んでも反応しないから」
てつや「ごめん、考え事」
りょう「何考えてたの?」
てつや「りょうが怪盗を止めてくれる方法」
りょう「......」
怪訝そうな顔をするりょうの格好はちゃんと決まっている
てつや『宝を盗むのはあくまでもりょうを騙すための嘘、盗むは盗むけど...な』
分からせてやらなきゃ
お前は所詮普通の人間
俺とは別なんだって
てつや「行こう、時間に遅れる」
りょう「...うん」
猫には留守番を頼み、てつやたちは家を出る
近場だから走っていけば数分で着く
その成果、パトカーがちらほら走っているからバレそうだ
てつや「今日は走って行く、着いてこれなきゃ置いてくし、その時点で諦めろ」
りょう「だいぶキツイ物言いだな、いいさ、やってやるよ」
てつやが先に走って行く
その後ろをりょうが置いてかれないように走る
てつや『おいおい、ついてこれてるじゃん』
抑えているとはいえ、半分くらいのスピードで走っているてつやにりょうはついてきている
まさかついてこれるとは思ってない
てつや『俺はここまで速く走れる方法教えてない、じゃあ誰が...』
益々止めさせたくなる
ダメなんだって、俺は、お前にこんなこと...
お前はなぜ俺なんかについてくる?
あまり俺に期待させないで
ついてこられたら
てつやは後ろをついてきているりょうを振り返る
てつや『俺は...』
必死に食らいつく、といった感じではない
しっかりと、てつやに合わせて走っている
止めて、止めろよ...



俺は一人でやりたいのに、手を伸ばしたくなるじゃんか








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