少し遠くにいる俺には興味が無いのか、舞冬さんを挟んで舞の前に立っている。
菜々海さんが銃を降ろし、湊の日本刀を拾うと、舞の前に移動した。
舞は逃げる気力がないのか、虚ろな目で前を見ている。
諦めきった舞に向かって刀を振り下ろす。
当たる寸前、走ってきた斗真が舞を突き飛ばすような状態でギリギリ守った。
舞に振り下ろされた筈だった刀は斗真の肩に突き刺さった。
舞が駆け寄り斗真の背中に手を回す。
舞は再び俯く。
菜々海さんは斗真の肩から刀を引き抜いた。
斗真の肩からは大量の血が流れ出す。
俺はどうにかしないとと思い辺りを見回す。
近くにあったのはさっき転んだ時に落とした
サバイバルナイフ。
ここからは遠い。
さっき舞を追いかけたからそれで俺の足は既に限界を迎えていた。
足を引きづりながら近づき手を伸ばす。
あと少しというところでナイフは俺の視界の上にあがり消えた。
上を向くと、ナイフを持って立っている舞。
その様子は何処かおかしくて、俺が話しかけても反応がない。
舞の視線の先には菜々海さん。
菜々海さんの視線の先には斗真。
微かに聞こえた舞の言葉。
聞こえたと同時に舞は手に力を入れたみたいで柄にヒビが入る。
そして、走り出すと思いっきり菜々海さんの腕に突き立てそのまま切り裂いた。
刺すと同時に舞はそのままその場に倒れた。
そして、夏稀さんがやってきた。
夏稀さんは俺を素早く背負うと斗真達の方に駆け寄る。
斗真は肩を押さえながら立ちあがる。
菜々海さんは腕の止血をしようと必死。
舞は…気を失っているのか起きない。
血が流れているにも関わらず、舞を無傷の方の肩で担ぐ。
夏稀さんが走り出しその後ろを斗真がついて来ている。
夏稀さんが選んだのは舞の家。
小さく「ごめんなさい…」と呟くと土足で家に上がって2階の舞の部屋に入る。
多分、俺達の血痕で舞の家に逃げ込んだってことは菜々海さんも分かると思う。
だから、どうにかしないと…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。