第11話

偽物
536
2018/06/06 09:32
警察の事情聴取もあり、6時間はあっという間に過ぎようとしていた。
〜17:58〜



舞が一階の様子を見に来たのか降りてくる。
倉持柊翔
あと2分…
龍田斗真
ど、どうするんだよ…
倉持柊翔
どうするってどうしようもないだろ?誰かが死ぬのが嫌だから指を折るって…
龍田斗真
そう、だよな…
すると、
ボキッ!!!
部屋に骨が折れる乾いた音が響く。
倉持柊翔
え…?
音が響いた方に視線を向けると…
中峯優太
うわぁぁぁぁぁぁ!!!
指が痛いよぉ!!!
8歳の優太が手を抑え顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
そして……右手の人差し指が有り得ない方向に曲がっていた。
長谷川響
ゆ、優太の指が…
潘野菜々海
どうして…
そんな時、一部始終を見ていた人が動いた。
乙葉彩恵
なんてことするんですか!?
動いたのは彩恵さん、湊の姉。
彩恵さんの視線の先にいる人を見る。
そこにいたのは…
……優太の父、海斗さんだった。
乙葉彩恵
海斗さん!どうして自分の子の指を折ったりなんか…
中峯海斗
ん?皆を救う為だよ。僕の子は
指を犠牲に、村の人が死ぬのを
防いだんだ。
発言に驚いて言葉を失っている彩恵さん。
まるで、自分のした事が正解のように話している海斗さん。その横では、警官達が優太を保護している。
村の人を救いたいんなら、子供の指を折るんじゃなくて自分が折れば折ればいいだろ…
そう思い、怒りが込み上げてくる。
殴りたいと思ったけど自分の拳を握り抑えるように頑張った。
何故なら、子供は大人に勝てないから。
そして、再び海斗さんに目を向けると、海斗さんは壁に寄っかかっていた。顔から5cm
くらい真横にナイフが突き刺さって…
中峯海斗
っ…餓鬼のくせに何しやがる!
海斗さんが血走った目で"餓鬼"と呼ばれた人を見た。
みんなが一斉に後ろを向く。
そこには、肩で息をしている舞がいた。
神崎舞
ハァ…ハァ……。
中峯海斗
おら、なんとか言えよ!!!
暴言を吐きながら舞に近づいていく海斗さん
みんな、黙り誰も動こうとしない。
やがて、海斗さんは舞の前まで行くと、舞の胸ぐらを掴み上に持ち上げた。
中峯海斗
何も言えないのかぁ?
完全にナメた口調で言っている。
神崎舞
……んで………せんか……?
中峯海斗
はぁ?何て言ってんの?
聞こえないんだけど?
海斗さんが胸ぐらを掴んだまま揺らす、すると舞のフードが取れた。
舞は真顔で蔑むような目をしていた。
そして、海斗さんに言った言葉を言い直す。
神崎舞
…唾が飛んで汚いのでやめてくれませんか、親の失格者さん?
って言った。
中峯海斗
なっ…!?
倉持柊翔
うわっ…
龍田斗真
かなりの大口を…
中峯海斗
ふざけんな!!!
片付けられているパイプ椅子の方に向かって投げつける。パイプ椅子は音を立てながら倒れ、舞を下敷きにした。頭からはパイプ椅子が当たったのか血が流れている。
神崎舞冬
舞!!
舞冬さんが助けようとするが、海斗さんがそれを阻止する。
中峯海斗
退け。
押し退け舞の前に立つと、拳銃を取り出し舞の頭を狙っている。
神崎舞冬
ちょっ、やめてくださいよ!!
中峯海斗
残念ながら君の妹は、歳上への
礼儀がなっていないようだ。
そう言い、撃とうとしたその時…
中峯鈴香
…鈴香のお父さんを返して。
舞お姉ちゃんをいじめないで。
偽物はお父さんは…死んで。
海斗さんの拳銃から弾が出るより先に、
1階に来た鈴香が持っていた拳銃を撃った。
中峯海斗
がっ…
海斗さんがその場に崩れ落ちる。
乙葉湊
おいおい、マジかよ…
赤井夏稀
鈴香ちゃんが…
中峯鈴香
鈴香は、偽物のお父さんなんかいらないもん…
鈴香はそう言うと悲しそうな表情をして2階に戻っていった。

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