警察の事情聴取もあり、6時間はあっという間に過ぎようとしていた。
〜17:58〜
舞が一階の様子を見に来たのか降りてくる。
すると、
ボキッ!!!
部屋に骨が折れる乾いた音が響く。
音が響いた方に視線を向けると…
8歳の優太が手を抑え顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
そして……右手の人差し指が有り得ない方向に曲がっていた。
そんな時、一部始終を見ていた人が動いた。
動いたのは彩恵さん、湊の姉。
彩恵さんの視線の先にいる人を見る。
そこにいたのは…
……優太の父、海斗さんだった。
発言に驚いて言葉を失っている彩恵さん。
まるで、自分のした事が正解のように話している海斗さん。その横では、警官達が優太を保護している。
村の人を救いたいんなら、子供の指を折るんじゃなくて自分が折れば折ればいいだろ…
そう思い、怒りが込み上げてくる。
殴りたいと思ったけど自分の拳を握り抑えるように頑張った。
何故なら、子供は大人に勝てないから。
そして、再び海斗さんに目を向けると、海斗さんは壁に寄っかかっていた。顔から5cm
くらい真横にナイフが突き刺さって…
海斗さんが血走った目で"餓鬼"と呼ばれた人を見た。
みんなが一斉に後ろを向く。
そこには、肩で息をしている舞がいた。
暴言を吐きながら舞に近づいていく海斗さん
みんな、黙り誰も動こうとしない。
やがて、海斗さんは舞の前まで行くと、舞の胸ぐらを掴み上に持ち上げた。
完全にナメた口調で言っている。
海斗さんが胸ぐらを掴んだまま揺らす、すると舞のフードが取れた。
舞は真顔で蔑むような目をしていた。
そして、海斗さんに言った言葉を言い直す。
片付けられているパイプ椅子の方に向かって投げつける。パイプ椅子は音を立てながら倒れ、舞を下敷きにした。頭からはパイプ椅子が当たったのか血が流れている。
舞冬さんが助けようとするが、海斗さんがそれを阻止する。
押し退け舞の前に立つと、拳銃を取り出し舞の頭を狙っている。
そう言い、撃とうとしたその時…
海斗さんの拳銃から弾が出るより先に、
1階に来た鈴香が持っていた拳銃を撃った。
海斗さんがその場に崩れ落ちる。
鈴香はそう言うと悲しそうな表情をして2階に戻っていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!