心なしか、デクくんはつかれたように見える。
大丈夫、なんて言葉入っちゃいけない。
そう思った。
どうしてお礼をいうのかな?
あんなことがあったばっかりだからかな?
私にはわからない。
でも、私にできることはこれだけだから。
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林間学校が始まった。
今は、A組とB組のバスにそれぞれ乗るところだ。
デクくんの反応を見て、お茶子ちゃんの顔が段々と赤くなる。
手を叩きながら、踊る。
デクくんと話している途中で、焦凍が入ってきた。
焦凍は先に行ってしまう。
ついてこいということだろうか?
戸惑ってるみたい。
デクくん、キョトンとしている。
わたしが恥ずかしくなってきた。
逃げよう。これ以上いたら、おかしくなる。
さんずけたけど、嬉しいものだな。
自分の名前が呼ばれるのは。
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バスの中で聞いてみる。
私が女子友に、焦凍と座るといったらものすごくニヤニヤされた。
はずかしかったなぁ……
それだけだ。
当然のことを行ったまでなのに……。
御礼を言われる。
私には分からない。
それから、私は焦凍と何気ない話をした。
めったに喋らないから、新鮮味を感じた。
わからないことが多いけど、
ほんの些細な出来事をこんなに、
こんなに、愛おしく、楽しく思えるのは欺瞞なのだろうか?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。