side:雪田
大吾の死因は『癌』だった。
去年の花火大会のあとから、少しずつ大吾が学校に来なくなったのは病院へ行ってたからだ。
私は相談してくれなかったことに対する悲しさと大吾がいない喪失感にただひたすら泣くことしか出来なかった。
大吾はもっと苦しかったはずなのに。
泣くことしか出来ない自分が嫌になっていた。
自殺も考えた。
大吾のいない世界に生きてたって何も楽しくない。
それならいっその事死んでしまえばいいんだ。
大吾のいる世界へ旅立てばいいんだ。
なんて考えていた。
そんな私を救ってくれたのは『大吾』だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!