第23話

お嬢と執事~澤本夏輝~6
613
2022/06/07 03:00
その日の帰り。会場には顔を出さず家に帰った。何も知らないメイドにお父様が帰ったら伝えるように部屋で待っていた。お父様が帰ってすぐ私は一人でお父様の部屋を訪ねた。
あなた

失礼致します。

父様
父様
とりあえず座りなさい
怖い顔して座ってるお父様と目を合わせられなかった。
あなた

申し訳ありませんでした。

父様
父様
自分が何をしたのかわかっているのか!
あなた

本当に申し訳ありませんでした。

父様
父様
執事はどうした
あなた

私が部屋で待機しておくように指示しました。

父様
父様
あの執事とはどういう関係だ
あなた

どういう関係もなにもありません。ご存じの通り出会って一か月未満です。

父様
父様
ならこの状況をどうやって説明するつもりだ!
あなた

今になって言ってしまうのがもう遅いのかもしれませんが私はずっとこの婚約に反対でした。

父様
父様
なに!?いつからだ!
あなた

政治的な勉強に入り始めた時ぐらいからです。私には見え見えだったんです。結婚したその先が。

父様
父様
説明しろ。
あなた

詳しくは言いませんが、うちも向こうも跡取りがいないといっても過言ではありません。二つの財閥に候補が一人。その一人の候補がどちらを継ぐかもめることは見えていたではありませんか。

父様
父様
、、
あなた

お父様は世間の15歳がどんなものかご存じですか?私はいつも大人の対応をしなければならないため自分は大人だと言い聞かせてきました。ですがまだ15歳の私にはずっと自由がありませんでした。お父様は私の弱音を一度でも聞いたことがありますか?

父様
父様
お前が進んで取り組んでいることじゃ、、
あなた

私が辛いって言葉を口にしたのを聞いたのは夏輝、彼だけです。彼がいる場では必ず一度は笑顔にしてくれます。私が笑顔をなくしたのは自分が自由じゃない。辛いと思い始めてからです。五歳のあの時から使用人が減らされてるのではなくだれもつかないことも知ってます。子供ながらにすべてを知って心に一人で抱えていた私の気持ちをお父様はお考えになったことはありますか?

父様
父様
どうしてすぐに言ってくれなかった、!言ってくれたら、、
あなた

私の勘違いでしょうか。家族は多くの時間を共にしています。ですから家族の変化には口に出さずとも伝わると思っていたのですが。夏輝には何も言わなくてもすぐに伝わります。私の体調の変化もメイドはいつも見てるのに気づかなかった。でも夏輝はすぐに気づいた。私が変わったのは彼のおかげだと思いませんか?

父様
父様
わが子に無理強いをしていたなんて、、世界有数の財閥のトップでありながら、、彼とは大した日数を過ごしてないのにどうして
あなた

彼は今まで接してきた人の中で一番素直です。誰もやってくれないことを私でよければとすぐに言ってくれます。今まで言われたことがなかったから嘘でもその言葉が嬉しかったのです。もし私と夏輝が一緒になったとしても夏輝にはうちは継がせません。お兄様にもきちんと経営など教えてください。お兄様に最善を尽くしても不可能だと判断された場合は私が継ぎます。

父様
父様
なに!?
あなた

私にもその選択肢があったから経営学などすべて教え込んできたのではありませんか?

父様
父様
確かに万が一とは思っていたがそれは許さんぞ!
あなた

ならお父様はこの状況をどう収集つけるおつもりですか?私が跡継ぎの選択肢をなくした。跡継ぎもいない。瀬口財閥の機嫌取り、損害。おひとりでどうにかできるのですか?まぁ瀬口財閥なくとも大差ないかもしれませんが。

父様
父様
、、
あなた

私は夏輝をこれからも執事としてそばにつかせます。そして政略ではなく本人の意思として結婚も考えます。私からは以上です。

父様
父様
もういい、、戻れ
あなた

失礼致します。

正直部屋を出てすぐ勝ったと思った。私が中野財閥を乗っ取りたいからとかじゃなくて遠回しに私が手を貸してあげてもいいですよと言った。すべてを悟られた今、私の話に乗る以外選択肢がない。
自分の部屋のドアを開けるとソファに座っていた夏輝が勢いよく立ち振り返った。
澤本夏輝
澤本夏輝
お嬢様、!!
あなた

夏輝。そう焦らないで。とりあえず座ってくれていいから。

夏輝の焦りようは流石に笑ってしまいそうなぐらい。夏輝にはどう説明したらいいのだろう。とりあえず向かいに座り状況を説明した。一通り説明して夏輝の話も聞いた。
あなた

夏輝大丈夫?

澤本夏輝
澤本夏輝
はい、、私は
あなた

夏輝はこれからどうしたい?私はもうあんなに言っちゃったからな~とは思うんだけど

澤本夏輝
澤本夏輝
私はお嬢様に仕える身です。お嬢様の指示に従います。
あなた

ならさっきも言った通り夏輝はこれからも必ず私のそばで執事として仕えていてほしい。これは私の思いね?それから私の中でお父様やメイド、仕える全ての人よりも夏輝が一番特別な存在になった。もしこんな家でよければ、私でよければ、一緒にいて欲しい。夏輝の思いへの返事はこれ。私恋愛とかしたことないからわからないけど、、

澤本夏輝
澤本夏輝
私にはお嬢様しかいません。あなたがいいんです。
あなた

夏輝の本当の姿を私は知らないわ。でもこれからはお嬢様と執事じゃない関係でもあるから普通の夏輝、執事じゃない夏輝も沢山知っていきたい。

澤本夏輝
澤本夏輝
正直言いますと、私の普通の姿はただのダンスバカですが大丈夫ですか?
あなた

もちろんよ。なんなら夏輝の仲良くしてるお友達だって連れてくるといいわ。夏輝のことをよく知ってるでしょ?是非会いたい

澤本夏輝
澤本夏輝
友達ですか。賢くて天然で面白いのがいますよ笑全員ダンスバカですけど笑
あなた

私も一緒にやってみたいの。だから賢くて天然で面白いお友達と頭の切れて不器用で素直な夏輝を見てみたいの

澤本夏輝
澤本夏輝
お嬢様が望むのでいつでも連れてきますよ
あなた

連れてくる前に名前だけ教えてね。私たちの世界では相手から名前を聞くなんて非常識なんだから笑

澤本夏輝
澤本夏輝
そんな大した相手じゃないので気にしないでいいんですけど、、笑大樹くん、慧人、世界さん、翔太、夏喜って言います。
あなた

あら、夏輝じゃない夏喜がいるのね

澤本夏輝
澤本夏輝
ややこしいですけどね笑
あなた

夏喜はこれからの業務の時は私に敬語を使わないでね

澤本夏輝
澤本夏輝
わかりました
あなた

これからもよろしくね。夏輝。

澤本夏輝
澤本夏輝
はい。地獄までもお供します。
あなた

なに言ってんの笑

二人でいるときに輝く笑顔。お嬢と執事の関係と信頼しあえる彼女と彼氏の関係。二つの関係を持つ私達にしか感じられない幸せがこれからも続きますように。



-fin-

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