4月。
和山あなたは正門の前の掲示板を見て、ほっとした。
掲示板には新しいクラスの表が、ずらりと並べられており、各クラス36人クラスになっている。
あなたは2年B組36番だった。
中学の時からあなたの出席番号は後ろから数えた方が早かった。
テストを返させるときも、番号順に並ぶ時も1番後ろだった。
おまけに1人だけ違う小学校から転校してきたので、知り合いがいるわけでもなく、いつも1人だった。
クラスの表を見たあと、クラスに向かい、窓側の1番後ろの席に座った。
周りを見渡せばみんな友達と楽しそうにおしゃべりしていた。
【また、同じクラスになったね!よろしく!】
とか、
【ねぇ、このメンツで今度遊ぼーよ!】
とか、いろんな声が聞こえてくる。
楽しそうだなとは思うものの、なにせ中学の時から1人だったあなたはいつしか《うらやましい》とか《あの中に入ってみたい》と思うことも無くなった。
今日は始業式だけのため、午前中で終わることになっている。
《帰ったら何しよう》
終わってもないのにそんなことを考え始めた。
始業式。
校長先生の長ったらしい話も終え、始業式も終わりかけの時。
教頭先生がこの高校に転校生がいることを告げた。しかも2年B組に2人も来ると。
こう言われると、黒髪の男の子がステージに上がり、深々と礼をすると、マイクを通して話し始めた。
遠くから見ても綺麗な顔立ちだった。
見るだけで引き込まれるような、まるでここに集まっている女子高生、下手すれば女の先生でさえもうっとりさせてしまうような、そんな魅力が彼、山田涼介にはあった。
始業式が終わり、B組に本当に2人の男子高生が教壇の前に立っていた。
山田涼介は黒色の短髪で前髪が長くてハッキリとは見えなかったけど二重まぶただった。顎のラインとか顔の形とか、全部が全部整っていて遠くで見るより断然よかった。
ネクタイは少しだけ緩めていて、キラっと光る十字のネックレスをつけていた。
一方、有岡大貴は、茶髪気味の髪の毛で少しだけパーマがかけられていた。
山田涼介よりは顔は整ってはないが、子犬みたいな顔をしていた。こちらもネクタイは緩く縛られていて、羽のネックレスをつけていた。
挨拶が終わると、先生が
と言った。
空いているのは、私の右斜め前と右隣だ。
彼らが席に近づいて私に
と声をかけて来たので、私はびっくりしたが、頷き返した。
彼らが席に着くとそのままホームルームが始まった。
ホームルームを終え、その転校生2人と話すわけでもなく、帰る支度をし、真っ先に教室を出た。
その頃、自転車で来ていた転校生2人は自転車置き場でこんな話をしていた。
#3 Fin.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!