わたしはそっと手を出して、その上に乗せ
た。
冷たい水が、手のひらに流れ落ちてくる。ち
ょっと染みるけど、我慢だ。
今更だけど、この状況が恥ずかしくなってき
た……。
初対面の男子の手に触れるなんて、いつもの自分じゃ考えれないシチュエーションで、顔
が熱くなってくる……。
わたしは動揺を誤魔化すように、かばんから
ティッシュを出して、洗った所を吹いてく。
先輩はわたしの吹き終わるのを待って、ばん
そうこうを貼ってくれた。
絆創膏を持ってるなんて、マメな人だなぁ。
わたしの周りの男子ではそんな人居なかった
気がする……
立ち上がった先輩は、手を出してきた。しか
も怪我をしてない右手の方に。
ってなんだかちょっと嬉しくなっちゃった。
その手を取ると優しく引っ張ってくれて、収
まりかけた心臓がまた
"ドキドキ"
した
先輩の突然の大声に、びっくとなった。
今度はなに!?
わたしはスマホをチェックする。
慌てるわたしに、先輩はそう声をかけてき
た。
先輩は自転車にまたがって、わたしが乗るの
を待ってる。
ちょっと迷ったけど、このままじゃ遅刻しち
ゃう。
わたしは意を決して、先輩は後ろに乗った。
先輩はちらっと振り返って言った。
にこって笑ってそう言ったのは、わたしを安
心させようとしているから見たい。
さっきからそうだ。怪我の手当してくれる
し、送ってくれるし。
きっと優しい人なんだね。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。