第33話

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2020/05/30 11:28
時透無一郎
時透無一郎
あなた、、、あなた、、、
やっと思い出して僕は毎日病院に足を運んだ
あなたの両親に会って、自分の不注意でこうなったと伝えても、咎められることなんてなかった
時透無一郎
時透無一郎
こんちには
あなたの母
あら時透くん
今日も来てくれたのね
時透無一郎
時透無一郎
あなたはっ
あなたの母
毎日来てくれてるのにごめんね
クマができている

きっと、ここ何日もまともに寝ていないのだろう

それは、僕も同じだった
あなたの母
時透くん、ちゃんと寝てる?
時透無一郎
時透無一郎
、、、いえ
あんまり寝れなくて
いつ死んでしまうかわからない
こわい
もう、失いたくない
記憶を取り戻したのがこうなってからなんて

こうなってから縋るなんて
あなたが眠っている病室に入る
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
あ、
栗花落さんは、あなたの手を握っていた

彼女も毎日見る
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
起きないよ
あなたのベッドの傍にある椅子に腰掛けて、あなたの頬に手を滑らした
枕元にある機械は、あなたが辛うじて生きていることを示している
時透無一郎
時透無一郎
ごめん、あなた
ずっと忘れてて
時透無一郎
時透無一郎
お願いだから、目を覚ましてよ
どこかの物語みたいに、キスとか涙で目覚めてくれればいいのに
でも現実そう簡単にはいかない
お医者さんが言ってたのを聞いたことがある

本人の意思が強ければそれだけ目覚める可能性が高くなる、と
時透無一郎
時透無一郎
お願いあなた、起きて
僕に突き放されてどんな気持ちだっただろう
僕に彼女ができたと聞いて、どんなに苦しかっただろう
きっと彼氏と別れたのも僕のせいだ
図書室でもあなたの様子はどこかおかしかった

元気がまるでなかった
これほどの傷を胸に負って、はたしてあなたはそれでも生きたいと思うだろうか
僕なら、いっそこのまま死んでしまいたいと思うだろう

僕は栗花落さんとは逆の手を両手で包み込んだ
時透無一郎
時透無一郎
お願い、、起きて
その手を自分の顔に近づけて、おでこにくっつけた

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