焦りのせいで声が上ずる
でもなんとか誤魔化さなければ
デート中他の人のこと考えているなんてとてもじゃないけど言えない
誤魔化すための笑いが、今の彼に通じることはなかった
そんなに、私を想っていてくれていただなんて
私はなんて最低なことをしたんだろう
適当な気持ちで付き合って、他の人のことを考えて、、
酷く悲しそうな顔だ
私がそうした
ごめんなさい
ごめんなさい
わざと突き放そうとしてるのがわかるから
私は、こんなに優しい人を切り捨てるんだ
自分勝手に傷つけるんだ
無一郎と一緒になれるって保証はないのに
私は頷く
私の記憶も消えていれば
ううん
いっそはじめからこの人と出会えていれば
お互いにもっと幸せにいられたかな
傷つけないでいられたかな
次こそホントのお別れだ
私はそこを去る
最後に聞こえたのは小さく鼻をすする音だった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。