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「じゃあかんぱーい!」
「ありがとうございます〜」
初めてのサシ飲みに緊張してるのは俺だけで、あなたさんはいつも通り元気でテンションも高い。
「初めてやんな、二人でって。」
「はい、なんかほんまによかったんかなって。」
「えーなんで?嬉しいって!ゆずると飲むのも飽きたし。ふふ。」
気遣ってくれてはる感じはないから、ほんまに二人で飲むの嫌じゃないみたいでよかった。
「私に気遣わんでいいから好きなん頼んでな。」
「はい、ありがとうございます。」
とりあえずアルコールで緊張を緩和させるしかない。
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「ほんでなんで急に誘ってくれたんやっけ。」
最初のグラスが空いて、仕事の話が一旦落ち着いてきた頃、あなたさんが唐突に聞いてきた。
「それはもちろんあなたさんと飲みたかったからですよ。」
「えーそんなん言うキャラやったっけ?」
酔った勢いでボロが出るのも時間の問題や。
河井さんがせっかく背中押してくれたのに、この機会逃したらもう前に進むの無理かもしれん。
「…あなたさん。」
「うん?」
「好きです。」
「私も稲ちゃんのこと大好きやで。」
あーこの感じは伝わってへんなぁ…
「そうじゃなくて、女性として、です。」
「え!あ、そっちの…?」
明らかに困惑してるあなたさん。
そらそうやんな、いきなり後輩が好きです、なんて。
「嬉しいねんけど…私、彼氏おってさ。」
「えっ、」
「これ言うの稲ちゃんが初めてやわ、同期にも言うてないから。」
「そうなんですね、、、」
てことは河井さんも知らんかったんや。
「ごめんね、稲ちゃん。」
「…もし彼氏がおらんかったとして、僕が告白したらどうでした、?」
「え、」
まぁ結局は振られてたんやろけど、ここまできたら聞いときたい。
「もう顔捨てたろかなとか言うてるやつから好き言われたら嫌ですよね。」
「んー、私さ、稲ちゃんがブサイクランキングで1位なったりしてるけど、あれ全然信用してへんねん。」
「え?」
「顔なんか好き嫌いあるのは当たり前やし。でもさ、稲ちゃんは内面がめちゃくちゃ男前やんか。なかなかおれへんよ、あんなコメントできる人。」
俺がブサイクランキングで1位になった時に言うたことを知ってくれてはったらしい。
「あれ聞いて、めちゃくちゃええ子やんって思った。だからもし彼氏おらんかったら先輩後輩じゃなくて、お友達からもっと仲良くなれたかもしれへんね。」
「そう、ですか…。」
「まぁでも稲ちゃん、芸人として最高の顔持ってるんやし、今は恋愛より仕事しぃ。」
そう言って笑いかけるあなたさんは、すっかり先輩の顔に戻ってた。
「…はい、もっと頑張ります。」
「うん。さっきの稲ちゃんの真剣な顔おもろかったで。」
「いや僕笑い取ろうと思ってなかったですって。」
「うそ〜!」
俺が振られたことを気にせんように、また先輩後輩に戻れるように、あえて俺をいじってくれるあたり、やっぱ好きや。
だからもうちょっとだけ、諦めがつくまで内緒で想わせてもらお。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。