第2話

彼女が死んだフリをしていた-うらたぬき-
1,317
2019/03/24 14:47
ガチャッ
鍵の開く音と共に、扉が開く。そこには、
うらたぬき
うらたぬき
おぅわ!あなた?!
大量の赤い液体とともに玄関前に倒れる愛しい君がいた。
あなた

ん...

うらたぬき
うらたぬき
ぬぅわっ?!?!?!?!
俺の大音量に反応したのか、あなたはぴくりと動いた。
あなた

...はっ?!うひゃっ?!

あなたはむくりと起き上がり、俺の方を見るやいなや変な声を上げた。
うらたぬき
うらたぬき
どうした?!大丈夫か?!どこを怪我したんだ?!今救急車呼んでやるからな!!一体何があったんだ!!!
あなた

や...!!ちがうの!!うらたsん!!!

こんな時ばっかり鍛え上げた滑舌が働き、スマホを取り出しながらものすごい速度でまくし立てる俺に、君は若干噛みながら俺を制止しようとした...が。
うらたぬき
うらたぬき
誰かにやられたのか?!痛いところはどこだ?!まって指紋認証がぁ!!!
プッツン
あなた

1回...黙んなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!

彼女の怪我+反応しない指紋認証に一切噛むことなくパニクっていた俺の口を君はキレながら手で塞いだ。
うらたぬき
うらたぬき
ムグゥッ!!
あなた

説明するから。まずはそれを置いて?

先程一瞬般若のような顔になったとは思えぬような穏やかな顔で、かつカッコよく顎で俺の携帯をしゃくる。
うらたぬき
うらたぬき
はっ...はァ↑い...
思わず彼女のかっこよさに見とれた上若干大量の血というものにビビっていたのもあり、我ながら声が裏返った俺を情けなく思った瞬間であった...。
10分後
うらたぬき
うらたぬき
それで?血糊をわざわざ買ってきて玄関にぶちまけてそこに寝転び俺の帰りを待っていたら眠ってしまった、と?
先程とは打って変わり、仁王立ちする俺の前に正座して小さくなる彼女。
あなた

はい...ごめんなさい...

今にも泣き出しそうなその瞳に胸をつかれる。
ううう、ダメだダメだ。ここはしっかり叱らなければ。
はあ、と溜息をつき、俺は泣きだしそうな彼女に目線を合わせる。
うらたぬき
うらたぬき
これ、↓どうすんの
今度は俺が顎でしゃくる番である。
廊下の血(糊)をしゃくってみせると、彼女は益々小さくなった。
あなた

落ちにくいけど...綺麗になるまで掃除します...

語尾になるほど小さくなる彼女の声。
俺はもう一度ため息をついた。
うらたぬき
うらたぬき
あなた、こっち見な
あなた

はい...っわぁ...?

痛いような痛くないような微妙な感覚に衝撃を受け、混乱する彼女。心の中で笑う。
彼女の額に弱めのデコピンをしたのだ。
ついでに、彼女の目を手で覆う。
あなた

な、何...?

チュッ
微かに音が響き、俺がしたことを察した彼女の耳と頬がみるみる赤くなっていく。
うらたぬき
うらたぬき
俺も悪かった。最近ずっと撮影やら収録やらで忙しかったしな。ほっとかれたから、構って欲しくてこんなことしたんだろ?
彼女は黙って頷いた。
うらたぬき
うらたぬき
...ごめんな
あなた

...うん

そして、俺は彼女の目を覆ったままそっと彼女を抱きしめる。
うらたぬき
うらたぬき
それと、
あなた

ん?

うらたぬき
うらたぬき
うらたんって呼んでくれたの、嬉しかった
彼女が恥ずかしそうに身動ぎしたのがわかった。
あなた

...これからはそう呼ぶよ

うらたぬき
うらたぬき
...ふふっ....バーカ。
家に帰ると、彼女が死んだフリをしていました。

プリ小説オーディオドラマ