第4話

私の方が好き
1,113
2019/05/11 15:25
あほの坂田。
あほの坂田。
おいこらあなた?
あなた

はっ、ま、待って...い、息が...

息も絶え絶えに待ち合わせ場所に駆け込んできた彼女。30分の遅刻。
俺もいつも遅刻しているし本当は人のこと言えないのだが、ここは一応怒っておいた方がいいだろうな。
あほの坂田。
あほの坂田。
...あなた
あなた

...はい

俺の低く唸るような声に、彼女の姿勢がピシッと正される。低く出しすぎたわ←
あほの坂田。
あほの坂田。
...行こ
あなた

え、まって、ちょ、そっち逆じゃ?!

困惑する彼女をよそに俺は手を掴み目的地と真逆の方向へ進む。
そう、俺の家の方へ。
あほの坂田。
あほの坂田。
もー行く気失せた
あなた

え、それって...

俺が向かっている方向に何となく場所の検討がついたのか若干にやけだしてるあなたの顔がものすごく可愛くて、憎いぐらい可愛くて、掴んだ手を思いっきりぶんぶん振ってやった。
あなた

えっ、わ、なによ、ちょ、

あんまり面白い反応を見せてくれないので、俺は手を振った勢いのまま路地裏まで引っ張り込む。
あなた

んぇ?!なに?!

いよいよびっくりしだした彼女を一気に引き寄せ、
≡( ε:) |壁💫ドン(それ違う)
あほの坂田。
あほの坂田。
好きやで
耳元で囁いた。うわ、やってみると意外と恥ずいな、とか思っていると急に手を振りほどかれた。
あほの坂田。
あほの坂田。
...あなた?
あなた

〜〜〜っっっ!!!

しゃがみこんで背を向ける彼女。どうしたんだろうと思って顔を覗き込むが、髪の毛や腕に隠れてよく見えない。
よく見てみると、髪の隙間から覗いた耳が真っ赤だ。耳の縁とかそんなレベルではなく、もう耳全体が赤い。え、何。照れてるん。可愛いんだけど何この生物。可愛すぎて失神する。
あなた

もう!!

突然大きな声を出したかと思えば、いきなり彼女は立ち上がった。
立ち上がった彼女は、まさに、茹でダコ。
文字通り茹で上がっているのかと錯覚する程に顔が赤かった。
いや可愛いかよ。なにこいつ天使?
などとのんびり考えていると彼女は急に俺の懐にッッッ!!!!
何奴!!!あ、ちゃうか。
彼女は俺にぎゅっと抱きついてきた。
あなた

私も好きだし!!!!!!

え、それ何ギレ?と聞きたくなる勢いで何故かブチ切れながら俺の胸に顔を埋めてもごもごしながら言う彼女は最高に可愛かった。
あほの坂田。
あほの坂田。
んなん俺の方が好きやし!!!!
俺が!いや私が!!とお互い謎ギレして軽い喧嘩になりながら向かった家ではいつも通り俺がスマブラでボコボコにされましたとさ。
あなた

ふふ、やっぱり私の方がさかたんのこと好きだからスマブラも強いんだよ

絶対おかしいと思うような理論をドヤ顔で言う彼女が可愛すぎて、抱きしめてそのまま倒れ込む。
あほの坂田。
あほの坂田。
お前可愛すぎ...好き
ボソリと呟いたその言葉で彼女がまた謎ギレし出したのはまた別の話。

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