テレビの青白い画面に、レトロなイラストのゲームがピコピコと音を立てている。
俺はそれに夢中になり、彼女が構ってくるのがうっとおしくて仕方なかった。
だって、モノマネをしてくるのだ。
うらたさんのモノマネだったり
坂田のモノマネだったり
センラのモノマネだったり。
しかも微妙に似てるし。
特にセンラのあの絶妙な高さの声とはんなりさせるためのいい感じに鼻から息を抜く感じが本家にそっくりで...ってそんなこと言ってる場合ちゃうわ。
モノマネ魂をくすぐられた上にしつこく構ってくるのでつい大声を出してしまう。
いやそこだけ反応すんのやめろや。
その時、ゲーム画面で爆発音が響き、GAME OVERの文字が表示された。
あと少しで難しい局面を乗り切ることが出来たのに。惜しかった。俺は唸り声をあげながら頭を抱える。
すっかりやる気をなくしスマホをいじり始めた俺は、彼女の一言で顔を上げた。
若干涙目。胸が痛んだ。
そしてはっと気がつく。俺は彼女のことを一切考えてなかった。
気まずい沈黙が流れた。
俺は何とか彼女に笑顔になって欲しくて、彼女を引き寄せた。
こつん。
優しさそのものみたいな感覚と共に、おでことおでこがくっつきあう。
至近距離で見つめ合ううちに、俺達は次第に笑顔になっていった。
自信なさげな彼女。
少し時間が経ってから俺が言ったことを正確に把握する彼女。そんな所も好きだ。
そう言いながら自分の顔も熱くなっていることを感じる。それを誤魔化すように俺は笑った。
馬鹿みたいな会話をしながら、彼女は花のように美しい笑顔を咲かせた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!