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第1話

生徒会のプロローグ1~迷子の特待生~
29
2022/03/01 20:54
 まだ肌寒さが微かに残る3月の終わり。だだっ広い校舎内を1人の生徒が歩いていた。
領恩寺美空
領恩寺美空
生徒会室って何処かな……? この校舎広すぎでしょ!
 背に垂れる髪に大きな瞳、しかし野暮ったい眼鏡で台無しにしている少女・領恩寺りょうおんじ 美空みそらはしかし、旧男物の制服だった。
 彼女は学校法人葉影学園の経営する中でも金持ちが多く通う葉陰ばかげ学園にもうすぐ通うようになる生徒なのだが、何年かに一度しか出ないと言う噂もある……奨学金の得られる唯一の『特待生』として合格した事で春休み中に生徒会へ挨拶に行く事になっていた。
 しかし葉陰学院はお金持ちが通う学校で一般庶民の家に生まれた美空は新しい制服が買えず、父が学院OBだった為、通っていた際に来ていた旧男物制服姿を借りて着ているのであった。
葉陰学園はまだ新しい制服に変えて1年経つか経たないか位なので、春休みの部活動に来たらしい生徒達を見ても旧制服を着ている者も少なくはなく、美空が一番嫌いな目立つ事をしなくて済んだ。
 しかしそれに安心する間もなく、彼女は完全に迷っていた。
 葉陰学院は金持ちの集まる学院だけあって、敷地も校舎も何もかもが広かった。
領恩寺美空
領恩寺美空
(これなら方向音痴じゃなくても迷うよっ!)
 そう叫びそうになるのを堪え、小さな声で呟く。
領恩寺美空
領恩寺美空
どうしよう……
 声を掛けて訊こうにも誰も通らない所か、人の気配すらしない。
 途方に暮れかけたその時……。
???
???
どうかしましたか?
 後ろから声が聞こえ、美空は振り返った。すると一人の美少女と目が合う。
 彼女は近くの教室から出て来た様子だった。
領恩寺美空
領恩寺美空
(凄く……綺麗な人だな)
 思わずそんな事を考える。
領恩寺美空
領恩寺美空
えっと……
 にこにこと目を細めて笑っている彼女に何と切り出そうか迷うが……少し首を傾けたと思うと、彼女の方から言ってくれた。
???
???
もしかして、迷っているのでしょうか? 貴女、新入生なのでは?
領恩寺美空
領恩寺美空
あ、はい。そうです……今日は生徒会へ挨拶をさせて頂く為に来たんですが……
 美空は首肯して答えた。
???
???
そうでしたか……とすると何年かに一度しか出ないと噂される特待生ではありませんか?
 再び訊ねる彼女に少々照れ臭くなりながらも頷く。
 彼女は見掛けだけではなく頭も良いのだろうと美空は認識した。
???
???
つまり、生徒会室に行きたいのですね?
領恩寺美空
領恩寺美空
はい
???
???
確かにうちは敷地面積も校舎内の面積も広いですから新入生なら迷ってしまって当然かも知れません……
 1人頷く彼女を静かに見つめる。しかし美空は次の瞬間衝撃の事実を聞く事になる。
???
???
でも貴女、凄いですね。真逆に来てしまっていますよ
領恩寺美空
領恩寺美空
え……ま、ぎゃ……く!?
 思わず彼女の言葉を復唱して固まる。
 彼女は微かに笑って言った。
???
???
ええ。だってこちらは……生徒会室のある北校舎と正反対の、図書館のある南校舎ですもの
 彼女は図書室から丁度出て来た所だったらしい。
領恩寺美空
領恩寺美空
ええ!? 本当、に?
 美空は驚愕して返す。彼女はもう堪えられないというように声を立てて笑いながら頷いた。
???
???
ええ……ふふ
領恩寺美空
領恩寺美空
ま、まさか僕って本当に本気で方向音痴!?
 ショックを受けて再び固まる美空に彼女は何とか笑いを引っ込めて言った。
???
???
兎に角生徒会室に行きたいと言うのならわたくしの目的と同じですから……案内致しますわ

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