結局、中学校のときと同じだ。
怖気づいて、結局言えなくて。
でも...きっと言ってもダメだったよね。どう考えたって勝てる相手じゃない。
言わなくて正解。うん、そう思おう。
この道、人通り少なくてよかった。こんなぐしゃぐしゃの顔見られたら恥ずかしすぎる。
1人だと、家までの道がすごく遠い...いつも憂くんと話してたからな、もうそんな機会ないだろうけど...今朝は楽しかったな。
なに、この人...マスクにサングラス、見るからに怪しい...。
ああこれが噂の不審者かまだ居たんだな
なんだっけ小学校で聞いたよな、いかのおすしだっけちがうな
いろんなことが頭の中に浮かんでは消える
どうしたらいいの、
これだけ口に出すので精一杯
お願い、これで引き下がって、
腕を掴まれる。
そういえばさっき変な路上駐車の車あったな。連れていかれるのかな。
嫌だ、怖いよ、
腕をつかむ手を振り払おうとするけど、力が出ない。
声を出そうとしても、喉の奥で引っかかってて息が漏れるばかり。
助けて、だれか、お願い....
憂くん...たすけて
振り向くと全速力で走ってくる憂くん。
不審者は手を離して走っていった。
ぎゅっと抱きしめられる。
いつもだったら照れてるけど、今はさっきの恐怖でそんな余裕もない。
憂くん、なんで来てくれたの。あの人と過ごすんじゃないの。
色々思ったことはあったけど、それは全部声にはならなくて。
嗚咽とともに出てきたのはこれだけだった。
私が落ちるくまで、憂くんは黙って背中をさすってくれていた。
やっと落ち着くと、今度は恥ずかしさが押し寄せてくる。どうしよう抱きしめられてる....。
だって、それは....
憂くん告白されてたし.....あ
今度は別の感情が襲ってくる。
そう、さっき私は、失恋したんだ。
伝えてすらないけど。
さっきは言えなかった。
だけど今助けてもらって思った。
昔から、私を助けてくれる優しい憂くんが大好き。
もう他人のものかもしれないけど、伝えるだけ、伝えたい。
もう一回会えたのはきっと神様がくれたチャンスだから。
憂くんの言葉を遮る。
覚悟を決めて、できるだけ笑顔を作って、15年間分の思いを込めて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。