日にちが経つのは早いもので、もう卒業式当日の朝になった。
そして、今日は私の恋が、ひとつの区切りを迎える日。昨日は眠れなかったし、今もドキドキしてる。
ふられたら、そこで終わり。
もしかして、実ったら、片想いの終わり。
どうなってもいいように、ちゃんと覚悟はしてる。
懐かしい。三年前もこんな感じで迎えた。
結局言えなかったけど。
あの時の後悔は本当に大きいものだったから、今度こそちゃんと伝えるよ。
髪型も制服もバッチリ整えて、いつもは学校にはしていかないリップと香水付けて。
身支度は完了。
ドアを開けて外に出ると、卒業式にふさわしい見事な晴天。
告白のこともだけど、憂くんの卒業式がいい日になりますように。
突然横からの声が聞こえた。
振り向くと眠そうな顔して笑う憂くんのがいた。
早起き苦手だから、いつも私よりあとに家出てるのに、今日だけは特別みたい。
最後の日、長く一緒にいられて嬉しい。
そこから学校まで、いろんな話をした。
幼稚園の時の思い出話とか、最近のこととか、大学のこととかも。
朝の爽やかな光の中で、15年間の中で起こったいろんな話をして、ただ幸せな時間だった。
告白がどうなるかわからないけど、こんなふうに楽しく笑いあえるのは最後かもしれないから。そう思うと泣きそうになった。
伝えたって伝えなくたってどうせ会えなくなるんだ。今日、頑張ろう。
横で楽しそうに笑う憂くんを見ながら、私は決意した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!