やっと言えた。
私は憂くんを置いて走り出す。
よかった。これでお別れだけど。
背を向ける直前に見えた憂くんは、あっけに取られた顔してた。
そりゃそうだよね、妹みたいにしか思ってない幼馴染のわたしに告白されたんだもん。
涙は止まらないけど、私の恋は終わったけど、きっと後悔はしない。
待たない。
私は返事なんて求めてないんだよ。
むしろこれ以上何も聞きたくない。
待てないよ。
追いかけてくる憂くん。
私も必死で走ったけど、男子に、しかも運動部だった人間から逃げ切れるわけなくて。
あっさり捕まってしまう。
これが私の本音。
もうちゃんとわかってるから。
憂くんはきっとあの綺麗な人のものになってるんでしょう?
それをわざわざ本人から聞くなんて無理だから。
ハッとした。
そう言って私の目をのぞき込む憂くんは今まで見たことないぐらい必死で。
私だけを真っ直ぐに見てた。
そんな目で見られたらもう、振りほどけない。もし、あの人への思いとかを語り始めたら辛いけど、憂くんとしてもけじめをつけたいのかもしれないし、ちゃんと聞こう。そして、思いっきり泣くんだ。
ああやっぱりそうなんだ。
大事な存在なんだね、ああダメだ、涙が堪えられない。
仮にも告白してきた女に、自分の彼女の話する?悲しみとともに怒りがこみ上げる。
....え?
わたし...?
ゆっくり顔をあげると、私を見つめて微笑む憂くんが居た。
ああ私可愛くないな。今こんな事聞くなんて。
ああ馬鹿だな私は。
なんでなんて普通聞かないのにね。
ちょっと早口で、顔を赤くして言う憂くん。
私の答えはもちろん決まってる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。