“バタッ”
ソファに座っていたりっちゃんが、床に転げ落ちるように倒れた。
ツリメがりっちゃんの横に座り、りっちゃんを揺さぶる。
でも…
起きない。
息をして…
ない。
流石に私も動画を一回止め、カゲから飛び出した。
そう呼ぶと、今にも泣きそうなツリメの顔。
今まで見たことないくらいの、焦った顔でスマホで救急に電話をかけようとするツリメ。
救急車を呼んでいるツリメの横で私は、持っていたそらちぃのスマホでエイジに電話をかけようとした。
でも、なかなかでない…
ワンコール…
ツーコール…
スリーコール…
私は、泣き出しそうな声でそう言った。
電話を切ると、全身が脱力した。
へなっと、私は座り込んでしまった。
そして、たくさん涙が出てきた。
今、会った人。
この人のこと、何も知らない。
でも、
1つの命が、消えかけてる。
今。
今。
今。
何もできない自分に。
こんな時に何もしてあげられない自分に。
腹が立った。
あぁ、なんで?
どうして?
なんで私はこんなにも、
役立たずなの?
数分後_
無事に救急車は到着した。
ツリメはりっちゃんと一緒に救急車に乗って、病院へ向かった。
ツリメは、半泣き。
本当は、我慢してる。
男を見せようと、頑張ってる。
りっちゃんのことを、信じてる。
数分後_
そらちぃたちが到着した。
そらちぃが、私の涙を優しく拭う。
しゃがんでた私を、エイジが力強く引いて立ち上がらせた。
車に乗り込むと、不思議とまた涙が溢れてきた。
車の中でそらちぃは、ずっとその大きな手で私の手を握っていてくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。