逃がしてくれた日から日向はしょっちゅう廃寺に来た
私と同じように寝てるだけ、気が済んだら帰る
気が付いたら毎日会ってる
だけど言葉は交わさない
話したとしても挨拶くらい
そんなある日だった
日向は血だらけで廃寺に来た
そう日向が言った途端、私は日向に押し倒された
私に馬乗りになる日向
これは、完全に理性切れてるな
何したんだよ相手側
知ってるから、出来ないって
前髪から見える怒りと戸惑いで揺れている目
腕を掴んでいる手にはどんどん力が入る
私の顔の横を殴る日向
日向は私からゆっくり離れた、だけど
腕だけは離さなかった
赤くなっている私の腕は
そのまま離すことなく
黙って、外を眺めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!