第97話

文化祭
27,479
2019/02/18 07:13
東京の真ん中。


高校生なら誰もが憧れちゃうような、


そんなキラキラした街。


私たちはそんな街で、


並んで歩いてる。
えっとね〜
まずはメイドの衣装からだね
光ちゃんがメモを見ながら確認する。


メイドの服は、私たち買い出し係が材料を買って、衣装作り係が衣装を作る。


どんな風になるのかな〜?


可愛い服だといいな♡
ハル
これって他にどこ行くんだっけ?
コスプレとかの材料売ってる店と……お皿とかコップもいるでしよ……
あと、飾りとかもいるし……
みく
たくさんあるね……
ハル
今日中に全部行けなくね?
確かに……
あ、二手に分かれる?
さくや
それいいんじゃない?
お昼にいったん集まるってことで
みく
うん!私もいいよ
海人
俺も賛成
二手か……。


どうやって分けるのかな?
みく
ねえ、どうやって分……
私は海人とでいいよね?
えっ……!!


光ちゃんと海人……?


二人きりってこと……?
海人
俺はいいよ
行くか
「ひかり」って名前……。


私のことは最初名字呼びだったのに……。


いつから仲いいのかな?


私の知らない間に……。


大丈夫。


悲しくなんて……辛くなんてない……。
ハル
みく!行こうぜ
みく
えっ……!!
さくや
待てよ!
海人
……
ハルが私の手首を掴み、走りだした。


私は夢中で足を動かす。


風が私とすれ違う。


……よかった。


これだけ走ったら、


涙乾くね。




私とハル、さくやはさっきいた場所からだいぶ離れたところへ来た。


ハァハァとみんな息をする。
みく
ど……どうしたの?ハル……
ハル
いや〜お腹空いたから?
さくや
は!?
お腹のために俺走ったのかよ!?
ハル
悪かったって
どうせお前もお腹空いてるだろ?
さくや
誰かさんのせいでな!
ハル
みくも何か食べよ
みく
うん!



ハルのバカ……。


知ってるわよ。


本当はお腹なんか空いてないんでしょ?


嘘つき。


ハルはいつも優しい嘘つきだもん。


あなたのことはわかるわ。


ずっと一緒にいたんだから。


海人と光ちゃんを見て傷ついてた私を、引っ張ってくれたんでしょ?


暗い闇の世界から


幸せいっぱいの輝く世界へ。


ハルが引っ張ってくれた手が嬉しかった。


私は卑怯ね。


ハルの気持ちを受け取らなかったくせに


ハルに少しドキドキしたもん。


ほんの少しだけどね!
さくや
あ、ここのドーナツでいいじゃん。
みく
うわ〜!
おいしそう……
さくや
だよな〜!!
ハル
二人ともよだれ垂らさないでね。


さくやも私を笑顔にしようとしてくれている。


優しすぎるんだよ。


私の友達は。
みく
……ありがとう
私は小さく呟いた。


二人には聞こえたのかな?


でもきっと聞こえてるな。


だって、


二人の耳が少し赤くなってるもん!


みく
えへへ……
ハル
な、何笑ってんだよ!
気持ち悪い!!
みく
き、気持ち悪いって何よ!
レディーに向かって失礼ね!?
さくや
レディーってどこ?
みく
さくや〜!!
私たちの上に澄み切った青空が広がる。


揚げたてのドーナツの香りがした。

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