東京の真ん中。
高校生なら誰もが憧れちゃうような、
そんなキラキラした街。
私たちはそんな街で、
並んで歩いてる。
光ちゃんがメモを見ながら確認する。
メイドの服は、私たち買い出し係が材料を買って、衣装作り係が衣装を作る。
どんな風になるのかな〜?
可愛い服だといいな♡
二手か……。
どうやって分けるのかな?
えっ……!!
光ちゃんと海人……?
二人きりってこと……?
「ひかり」って名前……。
私のことは最初名字呼びだったのに……。
いつから仲いいのかな?
私の知らない間に……。
大丈夫。
悲しくなんて……辛くなんてない……。
ハルが私の手首を掴み、走りだした。
私は夢中で足を動かす。
風が私とすれ違う。
……よかった。
これだけ走ったら、
涙乾くね。
私とハル、さくやはさっきいた場所からだいぶ離れたところへ来た。
ハァハァとみんな息をする。
ハルのバカ……。
知ってるわよ。
本当はお腹なんか空いてないんでしょ?
嘘つき。
ハルはいつも優しい嘘つきだもん。
あなたのことはわかるわ。
ずっと一緒にいたんだから。
海人と光ちゃんを見て傷ついてた私を、引っ張ってくれたんでしょ?
暗い闇の世界から
幸せいっぱいの輝く世界へ。
ハルが引っ張ってくれた手が嬉しかった。
私は卑怯ね。
ハルの気持ちを受け取らなかったくせに
ハルに少しドキドキしたもん。
ほんの少しだけどね!
さくやも私を笑顔にしようとしてくれている。
優しすぎるんだよ。
私の友達は。
私は小さく呟いた。
二人には聞こえたのかな?
でもきっと聞こえてるな。
だって、
二人の耳が少し赤くなってるもん!
私たちの上に澄み切った青空が広がる。
揚げたてのドーナツの香りがした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!