第116話

21,335
2019/03/03 10:03
私は走った。


ただただ、その場にいたくなくて。


『二人』を見たくなくて。


どこでもいい。


何もかも忘れられる場所を求めて


私は走った。




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結局私は、行くところもなくトボトボと外を歩いていた。


[たこ焼き]


[タピオカ]


[フライドポテト]


美味しそうな匂いと、にぎやかな掛け声が聞こえる。


文化祭……。


楽しいはず……だったのにな。


全部全部……私が壊しちゃった。


二人は今頃、何してるのかな?


二人で文化祭を楽しんでるのかな?


海人は私のことなんて……忘れてる?


私は、とにかく人のいない場所に行きたかった。


今は一人になりたい。


どこがいいかな……。
みく
(……あそこなら)



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サクッ。


カサっと揺れる草の音。


日陰になっていて、薄暗い。


あの賑やかさが嘘のように、シーンと静まりかえっている。




中庭。





本当は何もかも忘れたくてここにきたけど。




ここは……海人を初めて見た場所なんだ。




海人と出会った場所。




私たちの始まりの場所。





こんなところに来たら……




思い出しちゃうじゃん……。
みく
……ぅう……んっ…グズっ〜
もう我慢しなくていいんだと思ったら。


次から次に涙がでてきた。 


辛い……辛いよ。


「光ちゃんだから、何もできない」って強がってた。


本当は……ずっと泣きたかった。


私、きれいな心なんかじゃないから……。


やっぱり光ちゃんを恨んじゃう。


なんでよ……。


私の方が海人と先に仲良かったのに。


私の方がいっぱい海人と話してるもん。


私は海人に抱きしめてもらったもん。


光ちゃんより……


ずっとずっと……。




 

海人が好きだもん。






ずっとだもん。


海人が教室で自己紹介する前に会ってたもん。


私を助けてくれたときから、ずっとだもん。


私の方が海人を思ってるもん……‼
みく
うう〜〜んっ……グズっ
そんなことを思っちゃう自分を嫌になる。


海人……海人!!


自分でもわかってるもん。


私は光ちゃんに勝ちたいんじゃなくて。





ただ……あなたに好かれたいだけだもん。



だけど好かれない。



こんなこと……自覚したくなかったよ。








『片思い』だ。
みく
フっ……グズっ……うぅ
??
いつまで泣いてるのよ
みく
……えっ!?
突然声が降ってきた。



だ……誰??



私は顔を上げた。



涙に光が反射したせいなのか。



その人はキラキラと輝いて見えた。



淡い桃色の髪の。



美少女。

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