第168話

クリスマス
20,026
2019/07/24 09:22



クリスマスの夜。



私たちは結ばれた。








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海人
みく……大丈夫?
みく
うん……
まだ少し痛いけど


私は海人の胸板に顔を埋める。

海人の匂いがする。

すごく落ち着く……。

そんな私の頭を海人が優しく撫でてくれる。

こんな時まで……優しいな。



私たちは結ばれた。

私は海人とセックスした。

海人のことが大好きだったから。

シたかった。

海人はもちろん、セフレよりは下手だった。

だけど……

私は今までで一番。

熱くなって。

感じて。

とろけて。

気持ちよかった。

こんなセックス初めてだった。

気持ちがあるのとないのでは、こんなに違うんだね。

今でもずっとドキドキしてる。

私、海人と結ばれたんだよね……。

何だか、現実感がない。





海人
みくは、今日帰らないと行けないよね?
みく
一応……お母さん帰ってくるから


今は夜の10時。

多少遅くなっても大丈夫だと思うけど。

一応帰らないと心配されそう。
海人
もう……出る?
みく
……
みく
……もう少しこのままでいたい


私と海人はベットで抱き合ってる。

私は海人しか見てなくて。

海人も私しか見ていない。

私と海人の2人っきりの時間。

早く帰らないといけないのはわかってるけど。

もう少し……

あと少しだけ……

このままで。
海人
うん、わかった


海人が、私を抱きしめる力を強くする。

海人の体温を感じる。

みく
うん……


このまま、時間が止まればいい。

これ以上の幸せなんてないんじゃないかな。

いっそのこと、明日世界が終われば。

最後の日を人生で一番幸せな日にできる。

そんなひねくれたことを思いついてしまうくらい。

私は満たされていた。

幸せだった。




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海人
ごめんな……
送ってやれなくて
みく
大丈夫っ!
終電逃したら大変だもんね


私と海人は今日のデートの約束をしていた場所に戻ってきた。

二人で手を繋いで、他愛もないことを話していた。

学校の先生のこと……。

友達のこと……。

近所のネコのこと……。



そして、『未来』の話。



理想の家庭……。

子供に付けたい名前……。

結婚式に誰を呼ぶか……。





私たち、結婚できるのかな? 

これから、いろいろなことに立ち向かわないといけないと思うけど。

それでも、ずっとそばにいてくれるのかな?

未来のことなんて、わからない。

ただ、一つわかる。












____私は永遠に海人が好き。











これだけは自信を持って言えるの。


誰にも負けない。


私の大切な思いだから。







海人
……そういえば、みくの名前って『未来』って意味なんだろ?
みく
えっ?
あっ……そういえば……


前にお母さんから聞いたことがある。

私の「みく」って名前。

最初、お母さんは「未来」と書いて「みく」と読むようにしていた。

だけど、お父さんが言ったんだって。



" 『未来』は自分で描いてほしい "



だから平仮名で「みく」になった。

私の大好きで、大切な名前。


みく
そうなのっ!
自慢の名前なんだ
海人
そっか


海人が笑った。

海人の笑顔が世界で一番好き。

好きな人が笑ってくれるだけで、私も嬉しくなるの。

海人
じゃあな
みく
バイバイ


私は海人に手を振る。

海人は駅に向かって歩いて行った。

海人は振り返らなかった。

ちょっと寂しいような気もしたけど……。

それでも、そんなこと気にならないくらいに、私は満たされていた。

悩みや不満なんて、何一つなかった。

私は幸せだった。






























私は鼻歌を歌いながら家までの道を歩く。








ピーポーピーポー……









遠くで鳴り響くサイレンも軽快に聞こえるほど。










私はうかれていたんだ。

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