第78話

先生
46,591
2018/12/09 04:17
82


最後のテスト用紙に点数をかく。


点数の隣には


『春川 みく』


という名前。


あいつ、理科苦手だったはずなのに。


よく、頑張ったな。


解答用紙の隙間にはびっしりと計算が書かれてある。


全部、俺が教えた通りの。


高校生にもなると塾に行く人も増え始める。


だから、塾で習ったからと言って学校で教えた方法を使わない人は結構いる。


先生たちもしょうがないと、諦めている。


だけど、みくは……。


あいつも最近塾に行っている。


まあ、土曜日だけらしいけど。


みくが行っている塾に通っている人は、俺が教えている生徒にも何人かいる。


みくが行っている塾は、結構独特な方法を教える。


その方法は基礎では使えるけど、応用になってくると難しくなる。


けれど、みんな簡単だからと言って塾の方を使う。


だけど……みくは……。


俺はもう一度解答用紙を見る。


みくだけは、絶対俺が教えた通りの方法でする。


みくは今はあんまり頭が良くないけど、これから絶対に伸びる。


俺の教師の勘だ。


俺はパソコンに生徒の点数を打っていく。




みく
春川 みく

国語 61
数学 43
英語 52
社会 47
………!


何で……。


みく、いつもはもう少し高いのに。


今回は低い。


ある教科を除いて。


俺は指を動かす。
みく
理科 82
何で……


何で、理科だけ点数いいんだよ。


今回の範囲、みくの苦手な科学だろ。


なのに、何で……。


今回の理科の最高得点は84点。


それは……







宇治屋 海人。





そして、二番目は……









春川 みく。



二人とも、何でだよ。


俺が傷つけたのに……。


ひどいことしたのに。


普通は俺を恨むところだろ。


バカな生徒だ。









適うわけないな。


ちょっとは期待したんだよ。


みくが俺とのキスが世界一だって言ってくれたとき。


禁断の恋になろうと、そんなのどうでもいいくらい。


素直で純粋で、


明るくて、


すごく優しい、


俺の大切な生徒が、











大好きだった。


みく、今までごめんな。


みくが傷つくから、困るから一生この想いは言わない。


みくが幸せなら、それでいい。


でも、みくが卒業するまでは俺の生徒だから。


しっかり、サポートさせろよ。


どんなことでも、応援する。


俺の大切な生徒。

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