第139話

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2019/05/25 07:33
みく
私は……


風が吹く。


君が私を真っ直ぐに見つめる。


そうだよ……


私は……君が


君のことが













みく
好きなの……




___海人が好き。


今日、ううん……ずっと言いたかった言葉。

一番に君に伝えたかった言葉。






みく
私は海人が好き
みく
海人は私の初恋です

次ははっきりと言った。

ゆっくりと時間が流れる。

心臓がドキンドキンと鳴る。

だんだん怖くなってくる。






____ねえ、答えは?




海人
俺は……



一瞬、世界が静まり返った。


ヒュ〜……


夜の大空に一本の銀色の糸。
海人
俺は_____


ドーーンっ!!!!



広く深い大空に咲いた、虹色の光。

キラキラと光が舞い落ちる。

大きな音ともに、花火が打ち上がった。

後夜祭が始まったんだ。

みく
海人……!
聞こえなかったから、もう1回!

花火の音と海人の声が重なって、海人が何を言ったのかわからなかった。
海人
あ〜〜もう……

海人はあの「海色」の髪をクシャクシャとかきあげながら、私のもとへ歩いてくる。

海人が私の目の前にいる。









目の前で……
みく
……っ!!!


海人の腕が私の体を抱き寄せる。

時が止まったように、私の髪が靡く。

海人の腕の中に、私がいる。

心と心が触れ合う。





___海人に抱きしめられた。



___それが答え……?


みく
えっ…あっ……海人っ?!
何っ!?
海人
俺も……!


海人の腕の力が強くなる。

温かさがいっそう強くなる。









海人
俺もみくが好き
みく
……っ!?

言葉が出ない。

だって……

だって、それは……






私が一番欲しかった言葉だったから。




好きなの……?

私のことが?

みく
……本当に?
海人
嘘なわけないだろ


海人と体が離れる。

2人、視線が交わる。
 
海人の顔は暗闇でもわかるくらい、真っ赤だった。

それが……全ての証拠だね。




海人の全てが大好き。

前髪を直す仕草。

朝のぼーっとした挨拶。

真剣な眼差し。

歩き方……座り方。

ふわっと香る、石鹸の匂い。

大きな手。

大きな背中。

温かい腕の中。

海人の「海色」の髪。

強い意志を持った、金色の瞳。

海人の笑顔。

時々、寂しそうな横顔。

海人の温かさ。

海人の優しさ。





全部好きなの。

人の気持ちも……恋も何も知らなかった。

だけど……この気持ちは。





___たった一つの本当の気持ちだから。



みく
海人……
海人
何??
みく
ありがとう


あの日……


私と出会ってくれて


ありがとう









____永遠にずっと大好きだよ。





2人の唇が合わさる。

ほんの少し触れ合っただけの、小さなキス。

私の本当の……

「ファーストキス」だった。







____________________






このままハッピーエンドで終わったらいいのに。


この恋には、まだ秘密があった。


私が大切なものをなくすまで……気づかないような。


そんな……小さくて大きな秘密。







みく
海人……
海人
みく
ハル
ハル
……海人
愛音
……




いろいろな思いを残したまま。


最初で最後の文化祭が終わった。

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