第191話

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2019/08/24 05:55

私は夜空を眺めながら、心の中で叫ぶ。

もう会うことのできない海人を想って。

海人……海人……

会いたい……。

今すぐ「みく」って呼んでよ。

私を抱きしめて。

死なないで……。













シャラ……












手首がヒヤッとした。

あの日からずっと付けていた。

「それ」はもう、私の身体の一部となっていた。







_____海人からもらったブレスレット










ハートの鍵のついたブレスレット。

私の誕生日に海人がプレゼントしてくれた。

私の宝物。







" みく "


" 生まれてきてくれてありがとう "


" 愛してる "


" 俺が1番に信じてる "










私は息を呑む。

私の中で海人の声が響く。

手が震える。

身体全体が震え出す。

必死で奥歯を噛み締める。

ちょっとでも気を抜いたら、泣いてしまう。








" ずっとみくが笑顔でいられますように "














みく
………っ!





私は歯が欠けてしまいそうになるくらい、必死で奥歯を噛む。

押し寄せてくる感情を必死で抑え込む。

そうだよ……。





海人は私が泣くことなんか望んでない。







ずっと、人生を諦めていて。

何の感情もなかった私に。

感情をくれたのは、海人だった。

私は海人から、たくさんの『笑顔』をもらった。

笑い方を忘れていた私が。

あんなに笑えたの。

海人の隣では、いつも笑っていた。








……それなのに。










みく
すぅーーハァ……


私は夜空に向かって深呼吸をする。

澄み切った空気を吸って、溜め込んだ感情を吐き出す。

外にいるおかげで、涙は乾くのが速い。

私は涙が伝った頬を拭く。

そして、まっすぐに夜空を見つめる。

フェンスを握る手に力を込める。












どんなに辛くたって。



私は笑顔でいなくちゃいけない。









海人に出会って。

私はたくさんの温もりを知った。

道を間違った私は。

人生をあきらめていた。

海人と出会った頃の私なんて、本当に可愛くなくて。

笑わないし、感情はないし。

……でもね。

海人の優しさに触れて。

凍っていた私の心が溶けていったの。

海人が

私のことを助けてくれて、

救ってくれて、

欲しかった言葉をくれたとき、

私は死ぬほど嬉しかったんだよ。

 


私はずっと、自分のことが大嫌いだった。

だけどね……

海人に出会ってから。

ほんのちょっとだけどね。

自分のことが好きになったんだ。

少しだけ、自分のことを信じられるようになった。

ありがとう。





ずっと、どんなことがあっても私が海人から離れなかったのはね……

それだけ海人が好きだったってことだよ。

海人が助けてくれた日から……ううん、小さい頃からずっと、私は海人が好きだったよ。

今でも変わらない。

今でもずっと大好きです。

何もできなくてごめんね。

いっぱいわがまま言ってごめんね。

不器用にしか愛せなくてごめんね。


……いつまでも好きでごめんね。








この人生で、この世界で、あなたに幸せでした。

灰色で感情のなかった私の世界が、彩られていったんだよ。

海人は私に「俺のことは忘れて」って言ったけど。

私は決して忘れません。

……忘れられません。

笑って

怒って

泣いて

また笑って、

海人との思い出すべてが、私の宝物です。









だから……




どうか




生まれ変わって、幸せに暮らしてください。










海人の幸せを最期まで願ってます。


もう、私は充分です。


……海人のいない世界で


強く生きます。


だから


















バイバイ

















じゃあ、最後に。




死にたかった私に「未来」をくれて













______ありがとう。

















海人のことがずっとずーっと、大好きでした・・・






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