第119話

文化祭
21,743
2019/03/13 10:53
??
私もね……選んでもらえなかったの
女の子は立ち止まる。

風が吹いて、桃色の髪がなびく。

透き通った髪の隙間から、女の子の表情が見えた。

長いまつげを伏せていて。

『悲しみ』の表情。
みく
……誰に?
??
私の大切な人よ
??
私はその人が大好きなのに……
みく
私も……
海人が好き。

大好きだよ。
??
その人はとても優しくてね
みく
うん……
海人はとても優しくて……。

優しすぎて。

私の心を震わすの。

あなたが優しくしてくれるたび、泣きそうになるの。
??
優しいから…私のことかまってくれて
みく
そうなの……
優しいから……。

海人は何度も私を助けてくれたし。

応援してくれたし。

私はあなたに何度も何度も救われたんだよ。

……でも。

それは、『優しさ』?

私を……かわいそうだと思ったの?

同情なんかで、優しくしないで。

私にかまわないでよ……。

勘違いするから。

??
でも……!
みく
でも……
私の願いはたった一つ。







海人と両思いになりたい。







私が「好き」って笑いかけたら。

海人も「好き」って笑い返してくれて。

毎日、一緒に帰って。

ときにはケンカもするけど。

お互い、本当の気持ちを手紙に書いて、仲直りするの。

夜遅くまで電話して。

「おはよう」ってLINEするの。


そんな日々が欲しいよ。

あなたに選ばれたい。

あなたの彼女になりたい。

でも……
??
選ばれなかった
みく
選ばれなかった
私と女の子の声が揃った。

同時にお互いを見る。

少し、目が潤んでる。

それはきっと、私も。
みく
なんか……似てるね
??
あなたと似てるのなんて……嫌よ
みく
それはこっちもだよ
??
失恋女と似てるなんて……
私ってかわいそうだなー
みく
ちょっと〜!!
似てるね。

誰かに選ばれなかったことが似てるなんて……。

私たちって、どれだけ不幸なんだろうね。

でも……

私が似てると思ったのは……

相手を一途に思い続けているところ。

私もずっと海人だけで。

女の子もずっとその人だけなんだろうな。





 
??
もしね……
大切な人がいなくなったらどうする?
みく
ど……どうしたの?急に
女の子は後ろを向いていて、どんな表情をしているのかはわからない。

ただ……あなたの背中はとても小さく見える。

怯えてるの?

怖いの?

大切な人が……いなくなる?
??
ううん。
何でもないわよっ!
女の子はにっこりと笑う。

八重歯が見えて、とても可愛い。
??
そんなことより……
速く玄関に案内しなさいよ!
みく
わかったよ〜
私と女の子が歩き出したとき……

















海人
みくっ!
みく
か……海人!!?
みくちゃん!
と……えっ!!?
??
あっ!いた〜!!
みんなが目を丸くした瞬間だった。

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