第131話

先輩
24,327
2019/04/25 11:00
先輩
くそっ……!


ずっと気づかなかった。


気づけなかった。


私はずっと先輩に






____恨まれていたんだ。
先輩
だから俺は……!
みくに負けるわけにはいかないんだよ
先輩
俺はみくを潰す
先輩
俺に手なんか抜くなよ……


わたし……


私は……


先輩がボールを打ち付ける。

そして、力強く打つ。



パコンっ



勢いよく私のところへ向かってくるボール。

これはストレートだ。

先輩は左に寄ってるから、右ギリギリに打てば入るはず。

私は瞬時に判断する。

そして、ラケットを握りしめ……



パンっ



ボールは私の作戦通り、右ギリギリに飛んでいき……

線の直前でバウンドした。
先輩
……っ!
先輩は走って行ったけど、追いつかなかった。

それもそのはず。

全て作戦通り。

左に打つように見せかけて、直前で右に変えたから。

よく使われる技だけど、見抜きにくい。




これで2対1




私が勝ってる。



____________________



ずっと努力してきたんだ。

私はみんなより遅れているから……

みんなよりもっともっと努力しないと。

毎日練習が終わった後、近くのテニスコートに行って。

ひたすら基礎を固めて。

何度も何度もボールを打って。

転んで……くじけて……

また立ち上がって。

やっと、みんなに追いつけるようになって。

みんなを超えられるくらいになって。

それは……全部全部

私を救ってくれた……





____先輩のためだった。



____________________


パコンっ……


パンっ……!


パコっ


ボールが飛び交う。


私と先輩の汗が光る。


ハァハァ……


息も乱れてく。




4対4
海人
同点です……
先輩
ハァハァ……
うぜー……早く負けろよ
みく
先輩から…逃げるわけにはいきません

強い。

先輩は強い。

ずっとテニスをやってたんだ。

私が簡単に勝てるわけじゃない。

……でもここまで来たんだ。

勝ちたい。

先輩の実力に

先輩の気持ちに……








勝つのはどっち?


時間か努力か____

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