私たちは、満開の桜道を歩く。
3月だけど、ここの桜は早咲きみたいで、ちょうど満開だった。
何本もの桜の木が並ぶ道を歩くと、広い平地にたくさんの墓が並んでいる。
そこの隅に、海人の墓があった。
さくやが預かっていた海人の卒業証書を供える。
光ちゃんは行く途中で買った、百合の花を供える。
そして、パシャっと海人の墓に水をかける。
太陽の光が反射して、キラキラと輝いていた。
卒業証書と百合の花で彩られ、キラキラと輝く海人の墓は、他の墓より浮いて見えた。
愛音ちゃんが火のついた線香をみんなに配る。
そして、順番にさしていく。
私ももらった2本の線香をさした。
みんな、静かに目を閉じる。
そして、手を合わせた_______
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みんなで桜散る花道を歩く。
みんな楽しそうに笑ってる。
これが海人の望んだ世界。
私につくってくれた世界。
私一人じゃ、こんなことできなかったよ……。
幸せで、幸せすぎて……。
早く終わってほしかった高校生活。
だけど、今は終わるのが嫌だ。
ずっと、ずーっと続けばいい。
みんなと、「普通」の生活をおくりたい。
……だけど、それはもうおしまい。
これからはみんな、それぞれの道を歩いていく。
その道は、もう交わることはないかもしれない。
環境が変わって、新しい人に出会って。
また、幸せな日常をつくっていくんだろうな。
それでも……。
絶対にこの一瞬を忘れない。
忘れたくない。
私の大好きなみんなのことを______
今ならわかるよ。
幸せって、今この瞬間を言うんだね。
私は今、幸せです。
誰かさんのおかげでね。
ありがとう。
突然、手首を強く掴まれた。
私はビクッとして、反射的に振り返る。
そこにいたのは……
知らない、赤い髪の人_______
「赤い髪の人」の手には、海人からもらったネックレスが握られていた。
さっき、車の中で少し緩めたから落ちたんだ……。
私は渡されたネックレスを受け取ろうとする。
すると……
「赤い髪の人」の手が私の腕に僅かに触れる。
腕の神経がビクッと反応する。
「赤い髪の人」の白くて長い指が、器用に私のネックレスをつける。
そして、あっというまに私の腕にはネックレスがキラッと輝いた。
私は急な出来事に動揺していた。
それでも、お礼はきちんとしないと……と思い、「赤い髪の人」の目を見てお礼を言った。
よく見たら、「赤い髪の人」の目は黄色がかっていた。
その瞳で見つめられると、苦しくなる。
悲しくて、切なくて、泣きたくなる。
……それでも、前に進まなきゃ。
私は笑顔で言った。
もう、私は大丈夫よ。
だから、きっと素敵な人を見つけるね。
きっと、すぐそこに運命は隠れているはずだから……。
新しい出会いが待ってる。
私の後ろ姿をじっと見つめる「赤い髪の人」に気づかず、私はみんなが待つ道へ走った。
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暖かい春の日に
優しい眼差しと
まっすぐに進む光にかこまれ
私たちは______
強い大地に
咲く花のように
たくさんの愛と
大きな輝きを持って
未来に向かって
私たちはこれからも歩いていく______
" 世界で1番愛する君へ "
" 君の周りが笑顔で溢れますように "
" そして "
" 君が笑顔になりますように "
" それが僕のたった1つの願いです "
" 君の幸せを、彼方から見守っています "
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。