《 ハル 》
暗い暗い暗闇の中。
オレは立ち尽くす。
光がオレの前から消えた。
ハハっ……
マジか。
オレ、フラレたんだ。
フラレたんだ……。
好きだった……光に。
もう何か、言葉が出ねえっていうか。
これが現実なのかってわからなくなる。
あまりにも夢見心地で。
何も感じなくなる。
そんなオレの思考を動かしたのは。
ガラッと重苦しい音で開いた体育倉庫のドアから出てきた。
海人だった。
そういえば、手伝ってくれたお礼ってことで海人とみくには告白現場を見ていいよって言ったんだった。
そんなことも、まるで遠い昔のことのようで。
頭が追いついていない。
海人……海人か。
海人はオレを真っ直ぐに見る。
今、一番……
会いたくないやつだったのに。
……なんだよ。
何で、何も言わねえんだよ。
オレがどんな思いで……。
今、どんな思いで……。
明るく。
作り笑いして。
お前と話してるか。
……わかんねえのかよ!!!!!
オレは怒りを抑えられなかった。
気がついた時には、もう遅かった。
オレは海人の胸ぐらを掴んでいた。
ヒシヒシと拳に力を込める。
こうでもしないと、どうしようもなかったんだ。
オレは海人と違うんだ。
みくも光も海人を選んだ。
みくも……光も……。
ああーそうだよ。
オレは今、光が好きだよ。
すっげー大好きだよ。
でも、オレは最低なんだ。
どんな日でも。
みくのことを忘れた日なんてなかった。
オレはみくのこと、まだ忘れてなんかいない。
たとえ……誰かのものになったとしても。
やっぱり、初恋なんだ。
そんな……オレが死ぬほど愛していたみくを。
簡単に奪った海人。
何年も思い続けていた光を振った海人。
……わかってるよ。
海人は何も悪くない。
何もしちゃいない。
逆に、すっげーいいやつだ。
だからこそ……
今、すっげームカつくんだ。
すっげームカつく。
本当にムカつく。
はずなのに。
結局、海人に言えた文句はそれだけだった。
言えるわけがなかったんだ。
何で……何でなんだよ。
何でみんな……海人を選ぶんだ?
みくも……光も……。
オレはずっとずっと……今でも辛いことに耐えているのに。
毎日苦しいのに。
それでも、必死で生きてるのに。
やっぱり……ダメなのか。
一度……みくを傷つけたオレには。
道を間違ったオレには。
幸せになる資格なんて、ないのか……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。