《ハル》
俺は家族に捨てられた。
小さい頃、父さんと母さんは離婚した。
母さんの浮気が原因らしい。
俺は母さんに引き取られた。
しばらく二人きりで、狭く暗いアパートに住んだ。
でも、小学4年生のとき。
母さんは俺を捨てた。
もともと、ちゃんと育ててもらってなかったけれど。
いつも男と金ばっかで。
金のためなら、体なんていくらでも捨てていた。
俺がセックスを知ったのなんて、小学3年生のときだった。
俺が、学校から帰って来たとき。
母さんは、知らない金髪の男とヤっていた。
最初は衝撃的だったけど、それが続くと慣れていった。
俺は育つ環境が悪すぎた。
俺は、母さんに捨てられてから1人でアパートに住んだ。
父さんが必要な金は送ってくれた。
でも、なんだか悪い気がして中学3年からはアルバイトをした。
アルバイトと勉強を繰り返す生活。
帰ってくれば、家事もしなければいけない。
ものすごくストレスが溜まった。
自分でも抑えられないストレス。
それを発散する方法を俺は小さいときから知っていた。
セックスだ。
それから、俺は暇さえあればヤりまくった。
同級生の人、バイトの先輩……。
気持ちよくて、何よりセックスをしている時は何もかも忘れられた。
お金のこと、バイトのこと、父さんのこと、母さんのこと……。
間違っている、悪いことだってそんなのわかってる。
でも、やめられないんだ。
それしか、俺を抑えられる方法がないんだよ……。
そんな人生を送っていた俺。
そんな俺も高校生にはなった。
近くの高校に入学した。
今日は入学式。
アルバイトと勉強とセックスだけの学校生活になるだろうな。
そんなことを考えていたとき。
俺の視線の先に変な女子がいた。
制服からして、俺と同じ高校だ。
そして、この時間にいるってことは新入生だ。
道路の溝に手を突っ込んでる。
何か落としたのか……。
バカだな、入学式から。
俺は変な女子に近づく。
女子は座ってるから俺が見下す感じになる。
女子が上を向く。
目が合う。
綺麗な目だな。
黒いダイヤモンド。
純粋な瞳。
俺と違って汚れてない。
天使の瞳、だと思った。
見てみると、見事に溝に鍵が落ちていた。
手を伸ばせば簡単に取れそうだった。
案の定、俺が手を突っ込むと簡単に取れた。
俺は女子に鍵を渡す。
女子はそれを受け取った。
そして、俺を見る。
笑顔で女子は言った。
女子の周りがキラキラした。
ピンクのオーラに包まれる。
風が吹いた。
女子の綺麗なロングヘアーが揺れる。
その髪が女子の笑顔をさらに輝かせる。
ダイヤモンドの瞳で笑うと、
あんなに……
かわいいのか……。
俺は早足でその場を離れた。
ヤバイ、ヤバイ……。
ドキドキする……。
顔が熱い。
あの女子の笑顔が今でも残ってる。
恋なんて1つも知らない俺でもわかった。
俺はあの女子の笑顔に
一目惚れした。
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それから、あの女子が同じクラスの
「春川 みく」だと知った。
一目惚れの相手。
俺の好きな人。
ただ、俺にはどうしていいかわからなかった。
俺は愛し方も愛され方も知らない。
知っているのはセックスだけ。
だから……
みくの初めてを奪ったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。