第196話

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2019/09/01 11:38
みく
うわ〜


落ちてきた花びらにつられて、上を向く。

澄み切った「海色」の空に、何枚もの桜の花びらが舞っている。

花びらたちは風にのって、私達を祝福する。

ほのかに暖かい3月。

満開の桜。

私、春川みくは

仲間とともに3年間を過ごしたこの学校を

今日、卒業します______



____________________
校長
卒業証書授与


しんとした、張り詰めた空気の中。

担任の先生に名前を呼ばれた生徒から順に壇上に上がり、校長先生から卒業証書をもらう。

私も緊張をなんとか抑えながら、順番が来るのを待つ。

何度も練習したんだし、大丈夫よね。
担任
黒川 春留
ハル
はいっ

私の隣のクラスのハルがはっきりと返事をし、壇上に登る。

そして、卒業証書を校長先生から受け取った。

ハルは卒業式でも金髪だった。

目立ってるけど……その方がハルらしい。

ハル。

かっこよくなったね。

私はまっすぐに前を向くハルを見て、そう思った。

出会ったときとは、全然違う。

今のハルが、私は好きだよ。

先生
南 咲也
さくや
はい

さくやがクールに返事をし、壇上に上がる。

そして、校長先生から卒業証書をもらう。

さくやは受験で、難関大学に合格した。

きっとこれから、もっと輝くんだろうな。

クールで冷静だけど、優しいさくやがずっと好きだからね。

これからも頑張れ。



先生
春川 みく
みく
はい!

私は思いっきり声を出して返事した。

と、とりあえず声が裏返らなくてよかった〜。

私は転ばないように気をつけながら、ゆっくりと壇上に上がる。

そして、校長先生から渡された卒業証書を受け取る。

私、ちゃんと卒業したよ。

どんなに辛いことがあっても、逃げなかったよ。

すてきな高校生活でした。

私は壇上を降りながら思う。

この学校に、「ありがとう」と______




先生
水無月 光
はい

がしっかり前を見て、壇上に登る。

光の髪は、ずっと切っていないからか綺麗な黒髪ロングになっていた。

どこか大人っぽくなった光。

こんな私とずっと仲良くしてくれた。

光がいたから、毎日楽しかった。

くだらないことを言い合ったし、喧嘩もしたけど……。

それでも、私は光と友達でよかった。

優しくて優しくて優しい光が大好き。

これからも、ずっと「親友」でいようね。





そして





先生
宇治屋 海人


私は目をつむって、その名前を聞く。

何度も心の中で呼んでいたけど、他人の口からその名前を聞くのは久しぶりだった。

本当は呼ばれることのない名前。

……だけど。

海人にとっても、ここは大事な「学校」だから。

思い出のたくさんつまった場所だから。

卒業しないといけない。

もう私たちはここにいたらいけないんだよ。

羽ばたかなきゃ。

すぐ前に広がる世界へ。





海人が空の上から見ていたのかはわからない。

海人の名前が呼ばれた後も、式は何事もなく進み、そして終わった。


____________________
私たちも卒業か〜
みく
そうだね!
なんだか実感わかないな〜
さくや
明日からはもう社会人だよ
ハル
オレ、ヤバイわ


みんなで桜の木の下で話す。

卒業式も終わり、クラスでのお別れ会も終わり、それでもなんだか帰る気にはなれなくて、こうしてみんなで話していた。

こうやって、みんなで話すことも少なくなるんだよな。

ハルと光はここに残るけど、私とさくやは県外に行く。

簡単に会うことはできなくなるんだろうな。

そう思うと、すごく寂しくなった。
そういえば私、やり残したことがあるんだ
ハル
なんだよ〜?
ハル
ハル
オレっ??
ハルのことが好きです。
私と付き合ってください
みく
!?
さくや
マジ……?!

急なことで私もさくやも驚く。

誰よりも驚いていたのは、もちろんハルだけど。

急な光の告白に、ハルは口をあんぐりあけて、固まった。

しばらくそうしていたけど、急に我に返ったように目をパチパチさせる。

そして、光の肩をガシッと掴む。
ハル
本当……か?
……私ね。
海人の病気を知ったとき、海人が死ぬまで海人のそばにいるって約束したの。
だから、ハルに告白されたとき、断った。
私は海人のそばにいないといけないって……
でも、海人に死ぬ前に言われたの。
「もう十分だよ」って。
「光が本当に好きな人と幸せになれ」って。
すぐには無理だった。
だけど……もう胸を張って言えるよ
私はハルが大好き!

光がニコッと笑った。

綺麗な黒髪が揺れて、とても美しかった。

ハルはしばらく光を見つめたあと……。






ギュッ







光ちゃんを腕の中に抱きしめた。

ハル
オレも……ずっと好きだった


私は泣きそうになった。

ハルの気持ちも光の気持ちも知っていたから。

やっと二人の想いが通じ合って、すごく嬉しかった。

何度もすれ違って。

それでも最後には、通じ合えた。

それって、すごくすてきなことだね。

私はさくやと笑いあった。

二人がいつまでも幸せでありますように。

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