息が乱れてる。
せっかくの綺麗な髪も崩れてる。
走ってきてくれたの?
……本当、バカだね。
まだ少し怖くて、小さな声しか出せない。
先生の顔が見れない。
怒ってるよね。
私が一方的に拒んだんだから。
でも、嫌だった。
先生に触られるのも、
キスも。
先生と海人が睨み合ってる。
海人がこっちを向いた。
海人が先生に向き直る。
私はドキンとした。
海人の目がとても綺麗だった。
いつも優しい目だけれど、
今日はその中に強さがあって、
一段と澄んだ黄色の目が輝いていた。
先生が息を飲む声が聞こえた。
先生が言葉に詰まってる。
海人の勝利だと思った。
海人はすごいな。
先生がゆっくり口を開いた。
今までの先生からは想像できないくらい、小さくて弱い声だった。
ずっと、私より上にいた先生。
でも、今はとても弱々しく見えた。
海人はまっすぐに言った。
……っ‼
何で……
私にはわからない。
どうして……
他人のためにそこまで頑張れるの……?
最近の私はよく泣くね。
一つの雫が流れ落ちた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。