愛音ちゃんと話していたこともあって、約束の場所に着いたのは、10分前だった。
それでも、まだ海人は着いていなかった。
私は近くのベンチに腰掛ける。
太ももが一瞬ひやりと冷たくなった。
鏡を取り出して、もう一度容姿を確認する。
さっき、少し髪が乱れちゃったな〜。
ちょんちょんと前髪を整える。
よし……だいじょ
私の頭上から低い声がした。
ガバッと顔を上げると、そこには海人がいた。
海人だ……。
今日は髪をセットしてる。
私の大好きな「海色」の髪が、さらにかっこよくなっている。
ジーンズに白のニット。
そして、黒のコートが海人をクールに見せていた。
……ヤバイ。
かっこよすぎるよ////
えっ……え!!!!
か……可愛い??
カ・ワ・イ・イ!?
海人が可愛いって言ってくれた?!
ど……どうしよう!?
自分でもわかるくらい、頬が熱い。
照れて、海人の顔が見られない。
だって、それぐらい。
好きな人に褒められたことが。
嬉しかった。
海人が手を差し出す。
……今日はクリスマスだもんね。
魔法がかかってるの。
私は海人の手に自分の手を重ねる。
指と指が混ざり合う。
海人の手は予想以上に大きかった。
……この手に何度も救われたんだよな。
そんな手と私の手が重なっている。
それは、どれだけ素晴らしいことなんだろう。
大好きな人と両思いになれて。
大好きな人と笑いあえて。
大好きな人と手を繋げる。
きっと、それはものすごく難しいこと。
『奇跡』だね。
私は海人とクリスマスに彩られた街を歩いた。
恋人つなぎをして。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!