第12話

ボクサー
87
2021/08/27 02:55





翌朝は早かった。



おまけにしばらくダンスが続く。

スケジュールを確認して、ガックリした。

泊まりはあかん、てカレが言ったけど、オレはとにかくカレと離れたくなかった。


作ってくれてた南蛮漬け食べるだけ。

強引にカレのうちに行く。


昨日からずっと、まともな食事をしてなかったから、ロケ弁も全部食べられなかった。
カレはオレの為に、優しい味の大根の味噌汁を作ってくれて、食べられるだけでええ、残してええよって笑ってくれるから。
カレの優しさが嬉しくて、美味しくて、出してくれたご飯は全部食べた。
ようやく、カレを取り戻した気持ちがしてきた。


順番にシャワー浴びて、着替えが無いオレは、おっきなTシャツとカレのトランクスを借りた。
その姿を見てカレが、可愛いなって喜んでくれる。
歯を磨いて寝る準備をして、ちょっとだけ遊ぼうってゲームもした。


ふたりでベッドに横になったらもうガマンできない。


キスするだけ。

触るだけ。


オレがねだれば、よっぽどの理由が無い限り、カレは拒否しない。
だから色んな理由をつけて、カレを裸に剥き、全身にキスしまくった。

そんなオレを優しくじっと見つめて、カレはオレの頭や頬を撫で続ける。


「オレの愛撫、効かない?」


「(笑)いや?
ちゃんと効いとる。
ほら」


腰を突き出して昂りを見せつけるからこっちが恥ずかしい。


「でも喘がないし、息も乱れない」


「女の子とちゃうし」


じゃあ、オレはどうなんだ?
女の子じゃないけど、喘ぐし、息も乱すけど。

オレが不満そうにしたのに気付いて、カレはオレを優しく撫でながら話す。


「あんな、きっとボク、ボディーブローくらい過ぎて、皮膚が厚うなっとるんや。
だから鈍感になっとるんやろ。
女の子やあなたの身体は、殴られるようなことは無いやろ?
赤ちゃんみたいに柔かくて、皮膚も薄いままで、だから敏感なのとちゃうん?」


「そんなこと……」


「中もさ、挿れられるだけで、ほんまにそんな気持ちぃ?
そこは、ボクにはようわからんのよ」


「中、気持ち良く無いの?」


「挿れて悦んでるカレシ見ると嬉しいけど、ボク自身はそんなでもあらへん。
喜ぶから声出して見せたりするけどな。
やけど挿れるのはほんまに気持ちぃよ?」


そうなんだ!
これも聞かなきゃわかんなかったな。
ん、ちょっと待って。
挿れられた経験あるってことじゃん!
むっとしたオレに気付いて、すぐフォローしてくる。


「むかしや、むかし!(笑)
あなたが相手ならまたちゃうと思うねん」


ちくしょお。

オレはカレの胸から腹を撫でた。
なめした革のような肌触りで、筋肉の固い隆起がしっかりと感じられる身体。

確かに小さい乳首に触れて勃たせても、オレのようにビクビクしない。


「たくさん殴られた?」


オレは筋肉の手触りを楽しんだあと、カレの分身に手をかける。
明日から体使うから、お互いの負担がないようにオーラルでやろう。


「ボクシングで強くなるコツ知っとる?」


「強いパンチが打てることだろ?」


「みんなそお思うやん?
それがちゃうねん。
どんなパンチを打たれても平気にな……あっ」


ここは弱いよな。
良かった!
オレは思う存分舌を使って、カレの甘い声を楽しむ。
調子に乗ってしゃぶってたら、少々乱暴に引き剥がされた。


「あかんて」


「なんでだよ、いいじゃんか」


「おまんが先や」


いつもは「あなた」なのに、「おまん」だって。
なんか新鮮!
なんか嬉しい!


「やだ!
明日から体使うから、オレ使えないもん。
それに、やられたらオレ、いつもしてやれなくなるじゃん」


あやうくカレの下に組み敷かれそうになるから抵抗した。


「また暴れる」


「だって」


「……ほんなら、今日はキスしながら触り合お?
そんでええやろ?」


「……うん」


カレのキスも手も、大好きだから、妥協する。


キスだけでも溶けていく。


触り合おうって言ったのに、カレがキスしながらオレの乳首とペニスを愛撫し始めるから、オレの手はおろそかになって、気が付いたら快感でカレにしがみついてアンアン喘いでしまってた。

オレを爆ぜさせたあと、カレは尚も片手でオレの体に触れながら、自分でしごいて終わらせる。


ずるいよ、オレばっか。
オレだって気持ちよくさせたいのに。


カレがティッシュでオレを拭いてくれてるのがわかる。
でもオレはもう、だるくて動けない。
オレの体を抱き寄せながら、


「ボク、今度引っ越すことにしたんよ。
温水洗浄便座付きのトイレあるとこ(笑)」


嬉しそうに話してくる。
昨日は物件探ししてたのか?
トイレ、嬉しいじゃん。
でももうダメ。
カレの腕の中は安心で、幸せで、もう起きていられない。


オレは意識を手放した。





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