第6話

近付きながら
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2021/08/22 09:08




荒い息を静めながら、しっとりと汗ばんだカレの重みを全身で受ける。
ドキドキと鼓動が響いて、それがカレのかオレのかわからない。


「重いな?
ごめ」


ってカレが体を起こそうとするから、背中に両腕を回して、離れていかないようにぎゅっと引き止める。
ついでに開いた足もからめてやる。

冷静に考えたら恥ずかしいカッコ。
カエルみたい?
でももうそんなの今更だ。


「好きだ」


ってつぶやくと、カレが、オレも、って言ってきた。
わざわざ言わなくてもちゃんとわかる。
わかるけど、わざわざ言いたくなるぐらい好きだって思った。


さっきの、欲望剥き出しのキスとは違って、ついばむように、優しくキスされる。


「こんな、可愛いって、知らんかった」


つぶやいてきたからビックリする。


「ボクがやるんで、良かったん?
ボクてっきり、やられるんかと思てました(笑)」


なんだそれ(笑)


「どっちでもいいよ?
でもオレ、やってもらうの、好きだよ?」


言って恥ずかしくなる。
顔が熱くなる。


「上手でビックリした。
ずいぶん経験ある?」


「そっちこそ、慣れてますやん」


「オレは年上だし(笑)
この年で、なんも経験ないのもちょっとな」


「ボクは……見掛け倒しやって失望されたくないんで。
頑張りました」


恥ずかしそうに言うから驚いた。

そうか。

外見良いと、そういうプレッシャーもあるんだなぁ。
かわいいなぁ。

カレの首に手を回して、オレから優しくキスをする。


「オレとは頑張んなくていいよ?
自然でいいよ?」


「いやや。
頑張らしてくださいよ」


「なんでだよ?」


「あなたに、当たりを引いたって思て欲しいんや」


かーっ。
なんて可愛いいんだろ。
腰の辺りにズクンと響いた。


「先にシャワー浴びて来い」


「ほんとはふたりでシャワー行きたいのに。
狭くて……すんません」


トイレと洗面とバスタブ一緒の3点ユニットだから、そりゃ無理だよな。


「いいから、早く行って来い」


オレはカレがシャワーを使う間グッタリと体を休めて、入れ替わりにシャワーを使った。
シャワーヘッドを柔らかく緩んだ穴に当て、水流で中を流す。
精液以外、余計なものまで出ないか心配したけど、大丈夫だったから、ホッとする。
シャワーが当たった乳首は、痛みを感じるほど過敏に尖ってた。






オレは、本当に久しぶりにできた恋人に、すっかり有頂天になって舞い上がってた。
仕事も、新人としては破格の扱いで進んでいく。
少しずつ、少しずつ、昇っていってる手応えを感じてた。


ふたりで会ってても、何したいとか、したくないとか、カレからはあまり主張してこない。
たいていオレの方が、あれしたい、これしたい、食べたい、食べたくない、って言う。
カレはそれに付き合ってくれる。
でも、無理に付き合わせてる感覚はなかったし、


「それ、いいな」


「そうしよか」


「うわあ、ボクもめっちゃすっきや」


って肯定が返ってくるから、オレはどんどん調子に乗った。



言葉がなく見つめ合うと、すぐキスしてくるから。

オレの体のどこにも、頬を寄せてすりすりとしてくるから。

オレと同じ大きさだけど、オレよりも骨張った手でオレのいたるところに触るから。


その度にオレはカレを可愛いなって思い、愛しさを、募らせる。




だから、カレが縛られてる闇に、オレは気が付かなかった。



時々鋭く突っ込むけど、たいていは静かに笑ってるカレ。
そこが、みんなから、俯瞰(ふかん)でものを見てるって言われるゆえんだった。
だから、オレらが出会うキッカケになった、オーディションの時の話題に、カレが絶対に乗って来ないことに気付いていなかった。


「あんときさ、ああでこうでそうだったんだよ」


「えー、ボクらそれは知りませんからね」


「そんとき、何してたんすか?」


3人でわあわあしゃべってても、カレは静かに微笑んでる。





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