荒い息を静めながら、しっとりと汗ばんだカレの重みを全身で受ける。
ドキドキと鼓動が響いて、それがカレのかオレのかわからない。
「重いな?
ごめ」
ってカレが体を起こそうとするから、背中に両腕を回して、離れていかないようにぎゅっと引き止める。
ついでに開いた足もからめてやる。
冷静に考えたら恥ずかしいカッコ。
カエルみたい?
でももうそんなの今更だ。
「好きだ」
ってつぶやくと、カレが、オレも、って言ってきた。
わざわざ言わなくてもちゃんとわかる。
わかるけど、わざわざ言いたくなるぐらい好きだって思った。
さっきの、欲望剥き出しのキスとは違って、ついばむように、優しくキスされる。
「こんな、可愛いって、知らんかった」
つぶやいてきたからビックリする。
「ボクがやるんで、良かったん?
ボクてっきり、やられるんかと思てました(笑)」
なんだそれ(笑)
「どっちでもいいよ?
でもオレ、やってもらうの、好きだよ?」
言って恥ずかしくなる。
顔が熱くなる。
「上手でビックリした。
ずいぶん経験ある?」
「そっちこそ、慣れてますやん」
「オレは年上だし(笑)
この年で、なんも経験ないのもちょっとな」
「ボクは……見掛け倒しやって失望されたくないんで。
頑張りました」
恥ずかしそうに言うから驚いた。
そうか。
外見良いと、そういうプレッシャーもあるんだなぁ。
かわいいなぁ。
カレの首に手を回して、オレから優しくキスをする。
「オレとは頑張んなくていいよ?
自然でいいよ?」
「いやや。
頑張らしてくださいよ」
「なんでだよ?」
「あなたに、当たりを引いたって思て欲しいんや」
かーっ。
なんて可愛いいんだろ。
腰の辺りにズクンと響いた。
「先にシャワー浴びて来い」
「ほんとはふたりでシャワー行きたいのに。
狭くて……すんません」
トイレと洗面とバスタブ一緒の3点ユニットだから、そりゃ無理だよな。
「いいから、早く行って来い」
オレはカレがシャワーを使う間グッタリと体を休めて、入れ替わりにシャワーを使った。
シャワーヘッドを柔らかく緩んだ穴に当て、水流で中を流す。
精液以外、余計なものまで出ないか心配したけど、大丈夫だったから、ホッとする。
シャワーが当たった乳首は、痛みを感じるほど過敏に尖ってた。
オレは、本当に久しぶりにできた恋人に、すっかり有頂天になって舞い上がってた。
仕事も、新人としては破格の扱いで進んでいく。
少しずつ、少しずつ、昇っていってる手応えを感じてた。
ふたりで会ってても、何したいとか、したくないとか、カレからはあまり主張してこない。
たいていオレの方が、あれしたい、これしたい、食べたい、食べたくない、って言う。
カレはそれに付き合ってくれる。
でも、無理に付き合わせてる感覚はなかったし、
「それ、いいな」
「そうしよか」
「うわあ、ボクもめっちゃすっきや」
って肯定が返ってくるから、オレはどんどん調子に乗った。
言葉がなく見つめ合うと、すぐキスしてくるから。
オレの体のどこにも、頬を寄せてすりすりとしてくるから。
オレと同じ大きさだけど、オレよりも骨張った手でオレのいたるところに触るから。
その度にオレはカレを可愛いなって思い、愛しさを、募らせる。
だから、カレが縛られてる闇に、オレは気が付かなかった。
時々鋭く突っ込むけど、たいていは静かに笑ってるカレ。
そこが、みんなから、俯瞰(ふかん)でものを見てるって言われるゆえんだった。
だから、オレらが出会うキッカケになった、オーディションの時の話題に、カレが絶対に乗って来ないことに気付いていなかった。
「あんときさ、ああでこうでそうだったんだよ」
「えー、ボクらそれは知りませんからね」
「そんとき、何してたんすか?」
3人でわあわあしゃべってても、カレは静かに微笑んでる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。