しばらくずっと忙しい。
仕事はどれも楽しい。
メンバーともスタッフともうまくいってて、初のテレビ番組、初のラジオ。
雑誌も、ウェブも。
そして、初のファンミーティングの話も持ち上がった。
季節は冬に向かって走っていく。
ひとつひとつ、やり遂げる度に、オレたちは前進していってる。
最初はあった不安もいつの間にか消えていき、今は、より確かな手応えを感じていた。
カレと話し合って、体調管理の為に、しばらく泊まりは無しにすることにした。
良いパフォーマンスを維持するには、休息は大事。
野球選手だって、一流になると、営みはともかく、奥さんと夜一緒に寝ないって聞くもんな。
10代とは違うから、情熱だけで突っ走れない。
それでもベッドを共にしたら、どうしたってガマンはできなくなる。
オレたち、まだまだ付き合いたてだから、お互いの存在に慣れてない。
そばにいると刺激されて、強制的に離れてないと暴走してしまう。
特にオレが。
シャワーのあとで、鏡に映った自分の体をチェックする。
左の乳首のそばに付いた、薄いのと、濃いのと、ふたつのアザ。
泊まりはしばらく控えようって話し合ったあの朝、もう1度オマエの印を付けてくれ、ってオレからねだって、新しいのをもうひとつ付けてもらった。
「アザが薄くなって消えるまで我慢できるように、もっかいオマエのものって新しい印を付けてよ」
オレの言葉にオマエは優しく微笑んだ。
指で右の乳首を刺激しながら、また、左をキツく吸って、オレが強い快感に痺れている間に、もうひとつ、新しくアザを付けてくれたんだ。
そのアザを見つめてたら、アッという間にオマエがよみがえる。
抱きしめるとわかる、オマエの、筋肉の鎧に包まれたキレイな細身の身体。
それはギリシャかどこかの神話の神みたい。
オレの身体を愛撫する時、なだめるように必ず施される優しいキス。
低く何度もオレの名前を呼ぶ甘い声。
オマエもオレを思ってくれてるかな?
明日すぐ会えるのに、オレはオマエが恋しいよ?
ふたりきりになって、他の誰も知らないオレだけのオマエを、感じたくてたまらない。
安らかに眠る為に、オレは自分で熱を解放する。
控えめだったオマエが、少しずつ自分を主張し始める。
素で他のメンバーと絡む姿は愛しさのカタマリ。
容姿の美しさに気をとられてたらわからなかった、オマエの独特な思考。
頭は悪くないのに、漢字も読めるのに、何故か時々、理解が追いつかないのがみんなにバレて、ポンコツと呼ばれ始める。
何なんだろう、集中力が飛んじゃうのかな。
オレにしたら、きょとんとした顔も、あわてて焦る顔も、全部可愛い。
行動がパターン化するから、読まれやすくて、ゲームするとすぐ負ける。
ほんとにネコみたいだ。
ネコも自分で自分の行動をパターン化しがちだから。
そのくせ、ため息が出るほど男くさくて色っぽい。
頭の中では、刺身食いたいなあ、なんて考えてるくせに、憂いのあるまなざしを床に落として、見てるこっちをドギマギさせるんだ。
ズルイよな、ほんと。
そんで、そのカレがオレのだなんて、こんな出来過ぎた話ある?
オレきっとカレを手に入れる事で、人生のラッキー全部使い果たした。
だからあとはもう、メンバーのラッキーに頼るしかない気がするよ?
アザが薄くなる度、印が消えてきたよ、って、新しいアザを、付けてもらった。
ふたつ足してもらって、それが全部消える頃、ようやく3日の休みが手に入る。
生家に帰省する前の1晩、カレはオレんちに泊まりに来る事になった。
カレに飢えてたオレは、余裕なくカレを求めた。
カレも、オレをきつく抱きしめてきた。
すぐに裸に剥かれて、全身を撫でられる。
キスも愛撫も……加減を知らない強さだった。
快感だけじゃなく、痛みもあった。
思わず体が逃げても許されず、組み敷かれ、刺激を与えられ続けた。
何度も名前を呼ばれ、オレも応えるようにカレの名前を呼ぶ。
カレの激しさに驚きながら、人からこんなに強く求められるなんて生まれて初めてなのに気付く。
痛みも快感になって、喜びがオレを満たしていく。