今はホームルーム。教卓の前に立っているのは昨日の色素が薄めの髪を肩で切り揃えたあの少女だった。彼女のお辞儀に合わせてさらりと髪も揺れる。指示された席__僕の前の席__に座る彼女の姿がやけに目に映った。
それだけ言うと担任の教師は教室を出て行く。いつものように、またぼーっと窓の外を見ていると
急に話しかけられて変な声が出そうになるのを抑え、訂正する。
ふーん。いちる君か。
そう呟く彼女を見ると、彼女…星月さんはニコッと微笑んだ。なんだかその笑顔の意味が掴めなくて僕は机にうつ伏せになった。
放課後。その声に振り返ると星月さんが居た。ここは弓道場。僕は弓道部に所属している。部員は3年生の先輩4人、2年生の先輩2人と僕。廃部の危機と言われている。男女比は4、3と半々くらいだ。
自分で言うのもなんだが、かなりの珍しい物好きだと思う。
また、彼女は微笑んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。