第4話

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2022/07/23 21:00









あなた
ただっ...?!…いま…笑
南
…ぉそい。どこで何してたん?
あなた
ごめんね...同僚にお酒誘われちゃって
南
だからこんなにお酒臭いん?でもその割には酔ってないやん
あなた
私車だから。流石に飲めないし、おつまみだけもらって帰ってきた笑
南
え、じゃあお夕飯食べれんやん…せっかくオムラ
あなた
食べます
南
…ほんまにオムライス好きやな笑
あなた
南のオムライスは絶品だからね、食べないなんて損でしかない
南
んへへ......でも!その前に!
あなた
は、はい!
南
…お風呂、入ってきて。そんなお酒臭いとぎゅーできひん
あなた
…可愛いこと言わないでよ笑





紗夏と飲みに出て、珍しく酔い潰れた紗夏を家まで送ってから戻ってきた。


お迎えされて第一に抱き着かれたのは流石に焦ったけど、どうやら酒の匂いがキツくて紗夏のことはバレてない様子。


…さっさと紗夏との関係を終わらせればこんな冷や汗かかなくてもいいのに


そんなことを思いながら、今日一日お世話になったスーツを脱ぎ捨て、浴室へ。


鏡を見てみれば当然のように咲いている少しきつめの色をした紅い華。


鎖骨の下…こんなところじゃ蚊に刺されたは通用しない。


どうしてくれんだあの変態…


遠慮も何もない。少なからず紗夏もわかってるはず。


自分が浮気相手の立場であることも、私が南を大事にしてることも。


いや、大事にできてたらこんなことにもなってないんだけど。


ただ一箇所にしか付けないってのは…秀逸だよなぁ…笑















あなた
…んまぁ…まひふぇ…ふぉいひぃ……!
南
なんて?笑
あなた
…っ、まじで、美味しい!なんでこんな美味しくできるの?!
南
なんでって言われても…普通にレシピ通り作ってるだけやけどなぁ
あなた
あぁ〜もう今日は幸せです……ありがとうございます、ごちそうさまでした!
南
は〜い…なぁ、あなた
あなた
ん?
南
食器置いたら、ちょっと話したいことあんねんけど…
あなた
......何?
南
…ベッド、行こ?
あなた
…べ、ベッド?え?
南
いいから…




一瞬背筋が凍った気がした。


持っていた食器を手放してしまうかと思った程緊張が走った。


…バレた?紗夏との…いろいろ、バレたの?


いや、でもあり得ない。


南と私の職場は正反対だし、もし見ていたとしたなら私の職場付近まで来なきゃいけない。


私と紗夏の姿を見てから家に戻ったとして、オムライスを作る時間はなかったはず。


作り置きの味はしなかったし、わざわざケチャップで綺麗なペンギンまで描かれてたから、直接見られたなんてことはあり得ない。


誰かに見られた…?でも南の知り合いがうちの会社にいるなんて話、聞いたことないぞ…


緊張から無意識に顔を顰めている私と、何を考えているのか分からないような南の表情。


私の手を掴む南の手は随分暖かくて、力が弱い。


冷や汗が頬を伝う感覚。夏の近づいて来たこの時期、部屋の中は冷房が少しずつ効いているはずなのに。


寝室へ連れ込まれれば、ベッドの真ん中に連れられ肩を押され。


大人しくその場に座り込めば、目の前に静かに座った南の目元は少し赤い。



あなた
南……?
南
…それ…誰に、付けられたん…?
あなた
それ…って?
南
鎖骨の…それ、キスマークやんな
あなた
え…?あっ、これ?これはただ蚊に刺されただけ…だよ?
南
…私じゃ、あかんの?
南
最後にしてからもう一年くらい…私じゃ、物足りんくなっちゃったん?
あなた
あ、あの…南?なんか勘違いを…
南
っ私!が、頑張る…から…頑張るから…他の人なんて、見たら、あかん…
あなた
………誤解、だよ...これは蚊に刺されただけ、他の人なんていない
南
…ほんまに……?
あなた
... ほんと。そろそろ夏だし、蚊が出て来てもおかしくない時期でしょ?
南
…でも、浮気する人はそうやって隠すって…
あなた
わた...しは、隠さない。
南
…っよか…たぁ……
あなた
...ごめんね








あ〜…もう、罪悪感が、凄すぎる



報告するとか、半年間黙りこくってるやつが良くもまぁそんなセリフを言えたなぁ?


目の前の彼女が安心しきって泣いてる所を見て胸を痛める権利なんてないのよ浮気者には。




咄嗟に出た蚊に刺されましたとかいう杜撰な虚偽申告に、まんまと騙されてくれた純粋な南。


彼女にもっと頑張るからなんて言わせた挙句本当のことも言わずにバレなかったことへの安心感に浸ってるなんて。


誰かこんな最低な人間を指し示す的確な言葉を作ってほしい。最低でも物足りないほどのろくでなしだ。



…今、彼女の連絡先を断ち切れば、きっとこの事態は収束する。



会社が同じと言ったって部署は違うし、必要な会話は終業時刻までに済ませればいい。


…ここで、言わなきゃいけないのに。




勇気が、出ない。




























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