翔は真剣な顔であなたを見ている。
最初は思わぬ発言で混乱していたが、何となく落ち着いていき今は冷静になれている。
翔は真面目そうに聞くので言ってやった。
ふっ、あんたには無理。
翔はさっと名刺を見せた。
そうだ、コイツは超絶の坊っちゃまだったわ。
私は苦しくも頷いた。
実は私には家が二つあり、
一つは社長が送り迎えして来たときに
お金無いんだな、と
思ってもらえるように買ったボロアパート。
二つ目は貰った金で住んでる、高級マンション。
まぁ一つ目のとこでいいか?
えっバレた。
何こいつエスパーなん???
その美しい顔で
じっと見つめられると嘘がつけなくなる。
私のもう一つの家に誰かが入るのは
初めてで緊張を今からしてしまう。
翔は時間が少しかかったのか
急いで帰ってった。
何やってんだよ、私。
翔の前だと冷静さが無くなる。
昔のことを思い出してしまう。
本気になったら、また捨てられる。
冷静に判断してアイツを本気にさせてやるんだ。
-7時40分-
10分オーバー!
私を待たせるなんて良い身分ね!
てか…本当にアイツ来るのかな。
翔は後ろから声をかける。
…しまった。
冷静に判断せねば。
メニューに値段は書かれていなくて、
本当に高い店だと分かるけど
この店に合わない喋り方が妙に落ち着いてしまう。
あっという間に時が流れ、今は翔の車の中。
本当に私の家に行くんだよね。
そして、彼に今夜抱かれる。
私は翔の運転している姿を見る。
悔しいぐらい絵になる。
前にスカウトされたことがあるって言ってたっけ?
まぁそれなら私だって…
って何張り合ってんだろ笑
車を止めて、私の部屋1005号室に向かう。
緊張して何を自分が喋ってんのか分かんなくなる。
鍵を開け、ドアを開けた。
私は翔に今から──
翔は子供のように笑う。
翔はさっき買ったであろう服を持って
脱衣所に行った。
しばらくしてシャワーの音が聞こえてくる。
えっと…私はスタンバっとけばいいのかな?
どうしたらいいのか分からず、オドオドしてしまう。
すると、翔は上半身裸でバスタオルで頭を拭きながら出てきた。
私はその美しい身体と色気に惹き込まれる。
服を脱ぎ、鏡の前に立つ。
他の女よりは綺麗だよね…?
身体を念入りに洗い、鼓動を落ち着かせて
寝室に向かう。
私は今から翔の愛人になる──
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。