中間地点に着いて少し安心が身体の中に走った。
そんな時…
後ろからベージュのコートを着た女の人が自転車をこいで来た。
実はこのトンネル、2人並んで歩いたりするともう幅がないくらい狭いトンネルだった。自転車で並んだらもう幅なんてない。
なので美裕は日向の後ろに着いた。
でも…
美裕は小声で日向に言った。
美裕の言う通りだった。確かに一人分通れるくらいの幅が空いてる。なんで抜かさないのか?そんなことを考えていたら出口付近で…
そして出口で二人同時に振り返った。
周りには誰もいなかった…
思い出した。こんな真昼間に真っ暗で、しかも心霊スポットにもなってるトンネルで、ライトを…唯一の命綱にもなるライトをつけないで漕ぐだろうか?
思い返していくとおかしな点がいっぱいある。
確かにそうだ!普通、前のチャリにベッタリなんて有り得ない…
じゃーなんで…とも思ったが、その前に根本的におかしいことに気がついた。
その瞬間、2人は転がるようにして帰った。
福島の暑さは足元からジワジワ来るような半端ない暑さだ。いくら寒がりだと言っても真夏にコートを着るなんてどう考えてもおかしい…
つまり、あのトンネルの女は…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。