第2話

自転車
196
2019/11/24 22:40
中間地点に着いて少し安心が身体の中に走った。
そんな時…
小林 美裕
小林 美裕
あっ…
後ろからベージュのコートを着た女の人が自転車をこいで来た。

実はこのトンネル、2人並んで歩いたりするともう幅がないくらい狭いトンネルだった。自転車で並んだらもう幅なんてない。

なので美裕は日向の後ろに着いた。
でも…
美裕は小声で日向に言った。
小林 美裕
小林 美裕
ねぇ…後ろの人、おかしくない?
佐川 日向
佐川 日向
え?
小林 美裕
小林 美裕
いつまで経っても抜かさないの…
佐川 日向
佐川 日向
狭くて抜かせないんじゃない?
小林 美裕
小林 美裕
かなり空けたよ
美裕の言う通りだった。確かに一人分通れるくらいの幅が空いてる。なんで抜かさないのか?そんなことを考えていたら出口付近で…
小林 美裕
小林 美裕
まだいる…
佐川 日向
佐川 日向
美裕にべったりじゃん…
小林 美裕
小林 美裕
ちょっと変なこと言わないで…
そして出口で二人同時に振り返った。
小林 美裕
小林 美裕
あれ?
周りには誰もいなかった…
佐川 日向
佐川 日向
引き返したのかな?
小林 美裕
小林 美裕
だったらチャリ漕いでる後ろ姿とか見えるでしょ?
出口まで…ウチらが振り返りまであたしにベッタリだったんだから…
佐川 日向
佐川 日向
そう言えばあの人…ライトつけてた?
思い出した。こんな真昼間に真っ暗で、しかも心霊スポットにもなってるトンネルで、ライトを…唯一の命綱にもなるライトをつけないで漕ぐだろうか?
思い返していくとおかしな点がいっぱいある。
小林 美裕
小林 美裕
そもそもさ、チャリ漕いでて前の人にベッタリ…しかもギリギリ顔見えない位置で漕いでいられんの?
佐川 日向
佐川 日向
え?どいうこと?
小林 美裕
小林 美裕
だって普通さ、抜かすか、どんどん後ろに下がってくかどっちかじゃない?
佐川 日向
佐川 日向
確かに…
確かにそうだ!普通、前のチャリにベッタリなんて有り得ない…
じゃーなんで…とも思ったが、その前に根本的におかしいことに気がついた。
佐川 日向
佐川 日向
ちょっと待って!
あの女、コート着てたってあんた言ったよね?
小林 美裕
小林 美裕
うん。コート着て…え?
その瞬間、2人は転がるようにして帰った。

福島の暑さは足元からジワジワ来るような半端ない暑さだ。いくら寒がりだと言っても真夏にコートを着るなんてどう考えてもおかしい…

つまり、あのトンネルの女は…

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