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第1話

小林 遥
146
2018/09/16 01:50

【修学旅行は学習活動の一環いっかんであることを忘れない】


「学習活動が目的」なんて言葉を、ここにいる生徒のどれくらいが鵜呑うのみにしているだろうか。

そもそも、修学旅行のしおりのままに行動する素直な人間はいるんだろうか。

どちらも多分限りなく0ゼロに等しいと思う。
多分というか、確実に。


こんな事前確認なんて別に必要ない。
言ってしまえば、ただの儀式ぎしきに過ぎない。


生徒実行委員の呼び掛けに応じてぱらり、と
一斉いっせいにしおりのページをめくる音が体育館内に響く。

揃わないガサガサとした紙のこすれるこの音は嫌いじゃなかった。

実行委員である彼女の声に本気で耳をかたむける生徒は
ここに居ない。一人も。居たらごめん。


聞いているフリだけ。


そんなの簡単に伝わってくる。
浅木 ななか
浅木 ななか
──それでは、これで事前確認を終了します。
「ここから静かに教室へと戻り、
    各クラスで最終確認をするように。」
彼女が言い終わらないうちに体育館と本校舎を繋ぐ渡り廊下が声で満ちた。


────この3日間というのは、
     生徒にとってただの休息きゅうそくに過ぎない。


生徒にとっては。

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