第3話

2🐈‍⬛
1,053
2023/09/17 13:01

夏休みが終わり…もう二学期となった


みんなが受験やら進路やらで慌ただしくなり始める時期



…そんな時、私はまだ呑気に窓際の席で
季節の変わり目特有の生ぬるい風を感じながら
〝今後の自分“について迷っていた


みんなが真っ直ぐ前を向いているのに…
私だけがみんなとは違う方向へ歩んでいる感覚

そんな劣等感を日々抱えながら私は立ち上がり、
一枚の原稿用紙を音読した



        


        


        【私の家族】
私の家族は父、母、兄、私の4人で
父と母は共に警察官をしています

2人とも正義感が強く、とても優しい自慢の両親です
(なまえ)
あなた
…
(なまえ)
あなた
……私の兄はナズナという名前で
プロヒーローをしています
(なまえ)
あなた
きっと、これを読んでいる人も
一度くらいは聞いたことがある
ヒーローの名前でしょう

ナズナは個性に頼り切らず、
体術や射撃を得意の戦術とするヒーローです



射撃という面で、私も小さい頃は
よく兄とBB弾銃からスタートして練習をしていました
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
プロヒーローである兄
相澤茉莉としての兄
(なまえ)
あなた
…どちらの兄も努力家で
周りをよく見て気を利かせてくれる
自慢のヒーローです
(なまえ)
あなた
ナズナは今まで
沢山の人を救けてきました
(なまえ)
あなた
だから、私もそんなお兄ちゃんのように
沢山の人を救けて笑顔に出来る
立派なヒーローになりたいです
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
…そして、最後になりましたが
お母さん、お父さん…お兄ちゃん
(なまえ)
あなた
今まで私を育ててくれて
本当にありがとう
(なまえ)
あなた
みんなが私にとって
尊敬出来る大切な人達です
(なまえ)
あなた
いつか…そんなみんなに
恩返し出来るヒーローに
なれるよう私も日々努力していきます


____________そこまでの作文を読むと私は席に座る
(なまえ)
あなた
……

【私の家族】というテーマの元に書いた作文


自分の今置かれている現実は全て無視して
私は理想の『ナズナの妹』を演じて書いた


…私も何年か前だったらこの作文を
もう少し胸を張って読めたかもしれない、、、。
…でも、そんなことはお構いなしに表面的な言葉だけを
並べたこの作文の音読を聞いた人達は
私を讃えるように拍手をした
……世の中、本当に皮肉なものだ
(なまえ)
あなた
……


そして、
最も皮肉なことはこの作文を当事者に聞かれること


・
・



ナズナ
あなたの下の名前、いい作文だったじゃないか
ナズナ
お兄ちゃん嬉しくて涙が出そう

…数分後、

そう話しながら私の横を歩く彼こそが私の兄
ナズナこと相澤茉莉だ


いつも通り冗談を交えながら、
さっきの作文に感激したように話す


しかし、私はそんな兄に苛立ちが募るばかりだった

(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
なんで来たの
ナズナ
…?
(なまえ)
あなた
授業参観なんて
来なくていいって言ったじゃん
ナズナ
…仕方ないだろ
今回は授業参観と
引き渡し訓練がセットなんだから
ナズナ
父さん達は仕事で来れないし
必然的に俺しか来ることができない
(なまえ)
あなた
…
そこまでの正論を言われて思わず私は黙り込んだ


…そんなしょぼくれた私を見て、
彼は追い討ちをかけるように過去のことを語り始める
ナズナ
…にしても、、大きくなったな
ナズナ
BB弾銃で練習したこと
覚えてくれてたんだ
ナズナ
…てっきり忘れたものかと((
(なまえ)
あなた
…もう忘れてるわよ
(なまえ)
あなた
そんな何年も前の記憶、、
覚えてる訳ないじゃない
ナズナ
嘘、
さっき作文に書いてたじゃん



…少しでも兄を困らせてやろうとしているのに
私が『あぁ言えば』彼は『こう言う』


勝ち目が無いと分かっていながら醜い嘘を
重ねる自分がバカらしい
(なまえ)
あなた
……あ、あれは別だし

……それが私にとっての精一杯の反抗

でも、兄にとってはそんなの
『妹の可愛い戯言』としか見えていないのだろう



しばらくキョトンと顔を困らせた後、
またいつも通り笑顔で話す
ナズナ
……クスッ(笑)
ナズナ
やっぱりあなたの下の名前は可愛いな
ナズナ
また体術や暗器の使い方を
教えてあげようか?
ナズナ
1人じゃ心許ないだろ
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
1人で十分だから
ナズナ
…
(なまえ)
あなた
それに私は貴方とは違う
ナズナ
…?
当たり前だろ
性別も年齢も全然違うじゃないか


…あぁ、ほんと

そういう意味じゃないわよ、!

変なところで鈍いんだから嫌になる
(なまえ)
あなた
…そうじゃないわよ!
(なまえ)
あなた
あー、…もういい
(なまえ)
あなた
「私は個性を伸ばすことに決めたの」
ナズナ
!


その言葉に兄はやっと顔色を変えた


……そうよ、、

私は…アンタのそういう顔が見たかった
(なまえ)
あなた
お兄ちゃんとは同じ道を歩かない
(なまえ)
あなた
体術…射撃…暗器の使い方
どれも個性の二の次でしょ

その言葉に兄は先ほどから
声の高さをワントーン落として冷静に話す
ナズナ
…それは違うよ
ナズナ
個性にはまだ不確定要素が多すぎる
ナズナ
キャパを越えたり…
未知の暴走もあり得てしまう
ナズナ
そうなった場合…
第二、第三の刃を持っていないと



      『…うるさい』
ナズナ
…
(なまえ)
あなた
私に一丁前に説教しないで
(なまえ)
あなた
…いいわよね、
お兄ちゃんは私よりも
いい個性なんだから
(なまえ)
あなた
……そりゃ【報い】なんていう
お兄ちゃんのおこぼれみたいな個性
じゃないもの
(なまえ)
あなた
それだけ恵まれてたら…
私の気持ちなんて分からないよ
(なまえ)
あなた
(……私はお兄ちゃんが羨ましい

……そして、お兄ちゃんが憎い
(なまえ)
あなた
私はお兄ちゃんの全てが理解出来ないよ


射撃…?体術…??

笑わせないでよ



そんなの個性が上手く扱えないから
逃げ道を作っているだけじゃない
(なまえ)
あなた
……色々言いたいことはある

…だけど、たった一つ質問をするなら

私は間違いなくコレを聞く
(なまえ)
あなた
【因果応報】
ナズナ
!
(なまえ)
あなた
…はっきり言って
私よりもいい個性よね
(なまえ)
あなた
それなのに…
なんでそれを活かそうとしないの
ナズナ
……


その質問に口を閉じる兄


…こんなことで黙るなら初めから話しかけないでよ



(なまえ)
あなた
…そう、、
言いたくないわよね
(なまえ)
あなた
私ももうお兄ちゃんとは関わりたくない


いつか夢見た憧れ…なんて

今となっては私を縛り付ける呪縛

…挫折も苦渋も…もううんざり
(なまえ)
あなた
【兄の劣化版】
(なまえ)
あなた
それが私なんだよ


……薄々感じていた疑惑は
口にすることで自身で認めてしまった


でも、その通りだ


追いつこうとして…もがいて、、足掻いても…
(なまえ)
あなた
(私は貴方になれない


      いや…違う
(なまえ)
あなた
私の才能もセンスも…
欲しいものは全部お兄ちゃんに奪われた
(なまえ)
あなた
だから私は貴方が唯一使わない
個性を伸ばす
(なまえ)
あなた
それが私が個性を伸ばす理由


   『分かったなら…もう放っておいて』


そう言い切って振り返れば、
私の横にいたはずの兄は居なかった
(なまえ)
あなた
……って、、あれ、、?
(なまえ)
あなた
……

…余計に苛立ちを募らせながら



来た道を振り返って兄の姿を探すと、

小さい男の子と同じ視線でしゃがみ込み
話している兄の姿が目に入る




(なまえ)
あなた
…チッ


こんな時までヒーロー活動、、かよ

さすが…
偉大で勇敢で正義感が強いお兄様は素晴らしいこと



『パコンッ』
皮肉をたっぷり込めて道端の石ころを思いっきり蹴る
(なまえ)
あなた
…バッカみたい

マジで…2度と口を聞いてやらない

あの作文も帰ったらすぐに破いてやる


そんなフツフツと途方もなく湧いてくる怒りを
押し込めながら私は兄を置いて1人で先に家に向かった


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