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第2話

二、あのころ(1)
31
2019/07/03 14:43
教室では混沌と沈黙が混ざりあっていた。


私のすぐ後ろでは品川亜悠と仲がよかった女子が泣いていたが、それすらも遠くのクラスから聞こえてくる号令くらい小さく聞こえた。

それぐらい私は抜け殻で、自分の頭の中を整理するのにいっぱいで、ほとんど自分の心拍しか聞こえていなかった。



死んだ。



クラスメートが?

何も考えられず机に肘をついて窓の外を眺めた。





落ちていた。



血は鮮やかな赤だったのに。

彼女の顔は段々と白くなっていっていた。





あの情景がなんども頭の中でリピートされる。




私の席は一番左の列の真ん中あたりで、校庭の様子がよく見えた。
授業中は先生の注目の的にならない位置なのでゆっくりと空気が流れているような住宅街を訳もなくずっと観察していた。

しかし今そこには色を失ったように冷たい空気が流れ、物々しいスーツを着た大人たちが現場周辺の様子を順番に見ている。





ふとその大人たちの中に一人だけ雰囲気の違う無精ヒゲを生やした男を見つけた。
しゃがんで血痕を見ていたその男は一つ息を吐いて立ち上がると品川が落ちたと思われる屋上を見上げた。

私がその男に対して違う雰囲気を感じ取ったのはきっと男が警察というより裏社会に潜んでいそうな人のような出で立ちだったからだろう。



彼の視線が屋上から教室に移り目が合いそうになり私はとっさに黒板へ目を向けた。


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