《アイエンside》
今日、ヌナに会う。
初めてヌナのほうから連絡が来た。
カフェに呼ばれて、ヌナが先にいた。
いつになく真剣な面持ちをしている。
振られる、そうは言ったけど心のどこか少し期待してる自分がいるし、今日はその日じゃないかもしれないとも思ってる。
いつも通りに返事をしているつもりだけど、緊張して声が少し震える。
ヌナが俺に目を合わせて優しく微笑む。
分かってるけど、分かってるけど
そう聞いてしまった。
追いかけられなかった。
ヌナの意思の強い目を見たら、体が動かなかった。
それからヌナは、俺の前に姿を現さなくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!