《リノside》
ふと思った。
あなたに、また会いたい。
なんか、あのふらふらしてて掴みどころがないところが
すごく気になる。
顔が見たくなる。
連絡先を聞かなかったから会える可能性があるのは、あの公園へ一か八かでいってみることくらい。
今日は、あの野良猫ちゃんを探しに行ってみようかな。
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まあ、そりゃそうだよね。
いないのは分かってはいたけど、がっかりしてる自分がいる。
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それから、数週間。
何度かあの公園へ行ってみたけどいない。
もうあそこには来ないのかな。
もう、あなたのことも、聴かせてくれるって約束した曲のことも忘れかけていた。
そんな時のことだった。
いつものようにランニングをしていた。
街中で路上ライブをしているバンド。
アコースティックバンドかな。
聞き覚えのある声。
見覚えのある白い肌と長い黒髪。
間違いない。あなただ。
あの憂いのあるアンニュイな表情。
おかしいな。
すごく恋しかったのかもしれない。
掴みどころがなくて、猫みたいな彼女にいつの間にか惹かれてたのかもしれない。
今凄く嬉しい。
もうすでに周りにはたくさんの人で、俺は後ろから彼女のバンドの演奏を見ることにした。
1曲終わり、彼女が顔を上げる。
あの声だ。少しハスキーな落ち着いた声。
あ、今。
目が合った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。