第23話

名木沢くんからの告白
5,123
2022/07/23 04:00
一哉くんが、私たちのことを知っているのは、当然。
双子なんだから、毎日同じ家に帰って、お互いの話だってしているに決まっている。
別れ話のことも、もちろん……。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あっ、ごめん! 今日、暗い顔してたの、大丈夫かなって気になってて……
(なまえ)
あなた
……ありがとう
(なまえ)
あなた
一哉くんって、本当に優しいね
(なまえ)
あなた
(修二くんも、優しい)
(なまえ)
あなた
(優しかった)
(なまえ)
あなた
(でももう、それも過去形だ……)
今もまだ、この扉を開けて、入ってきてくれないかなんて、未練がましく思っている。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺は別に、誰にでも優しくするわけじゃないよ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
実は、結構冷たいし
(なまえ)
あなた
そんなことないよ。皆に優しくしてるところ、ちゃんと見てるよ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
そんなの上辺うわべだけだよ
そんなふうに話している今も、一哉くんはずっと笑顔を絶やさない。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺、ズルいからさ、相手が自分を好きだって分かってても、気持ちにこたえる気がないくせに、優しくするんだ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
嫌われたくないからね
名木沢 一哉
名木沢 一哉
でも、修二は違う。興味がない子には、愛想笑いすらしない
名木沢 一哉
名木沢 一哉
そういうハッキリしてるところ、昔からうらやましかったな
名木沢 一哉
名木沢 一哉
だから、女の子があいつを振り向かせたくなる気持ちも、すごく分かるんだ
(なまえ)
あなた
そうなんだ……
(なまえ)
あなた
(それなら、私にはたまに笑ってくれたこととか、喜んでもいいのかな)
(なまえ)
あなた
(少しは、好きでいてくれたって、思ってもいいのかな)
(なまえ)
あなた
あ、もうすぐ昼休み終わっちゃうね
(なまえ)
あなた
教室に……──!
「教室に戻ろう」と、席を立とうとしたら、椅子の足に引っかかってしまい、バランスをくずした。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
危な……っ!
私の体は一哉くんに支えられて、転ぶのをまぬがれた。
(なまえ)
あなた
あ、ありがとう、ごめん……
(なまえ)
あなた
危ない時は、いつも一哉くんが助けてくれるね
お互いの距離を取ろうと、手を前に出す。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
……
だけど、逆にグイッとその手を引かれて、私は一哉くんの胸の中に。
(なまえ)
あなた
えっ、え!?
名木沢 一哉
名木沢 一哉
言ったじゃん。俺、ズルいんだって
(なまえ)
あなた
あ、あの?
頭の上に、はてなマークがたくさん浮かぶ。
(なまえ)
あなた
(今、何が起こってるの?)
驚きすぎて、体が硬直こうちょくする。
(なまえ)
あなた
(だ、抱きしめられている……!?)
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あのさ、……告白、俺にするつもりだったって、本当?
(なまえ)
あなた
(なまえ)
あなた
そ、それは……
(なまえ)
あなた
……
一哉くんの胸の中で、顔が熱くて沸騰ふっとうしそう。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺じゃダメかな?
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺もずっと……、あなたの名字さんのこと見てた
名木沢 一哉
名木沢 一哉
初めて助けた日、あれも、偶然じゃないよ
(なまえ)
あなた
い、一哉くん……
胸の音が、声を邪魔するくらいにうるさい。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
修二とのことがあるの知ってて、今こんなこと言って、ごめん
名木沢 一哉
名木沢 一哉
弱みに付け込んでる
名木沢 一哉
名木沢 一哉
……ほら、ズルいでしょ
ようやくお互いの間に距離が出来て、久しぶりに呼吸をしたような気がする。
空気が薄くて、苦しい。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
でも、今の全部、本気だから
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺のこと、考えて欲しい
名木沢 一哉
名木沢 一哉
先に戻ってるね
一哉くんが空き教室から出ていって、緊張の糸が切れて、その場に座り込んだ。
(なまえ)
あなた
(一哉くんが、私を?)

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