第17話

名木沢くんとデートの約束
6,526
2022/06/11 04:00
雨は、上がっていた。
雲の隙間から、夕焼けが赤く照らしている。
名木沢 修二
名木沢 修二
……
修二くんは、何も喋らない。
元々、一緒にいてもそんなに会話があるわけじゃなかったけど、いつも以上に。
(なまえ)
あなた
あの、今日はごめんね
名木沢 修二
名木沢 修二
ごめんって、何に対して?
(なまえ)
あなた
えーと……、修二くんがいない時に、家に上がり込むなんて、気分悪かったでしょ?
名木沢 修二
名木沢 修二
気分? ああ、最悪
(なまえ)
あなた
!!
(なまえ)
あなた
ごめんなさい……
(なまえ)
あなた
服まで借りちゃったし、部屋見られたのとかも、嫌だったよね
名木沢 修二
名木沢 修二
違う
名木沢 修二
名木沢 修二
俺が、なんで怒ってんのか、全然分かってないだろ
名木沢 修二
名木沢 修二
なんで一哉とふたりきりなんだよ。なに一緒に帰ってんだよ
(なまえ)
あなた
ごめんなさい、傘忘れちゃって……
名木沢 修二
名木沢 修二
一哉の傘に入る必要ないだろ
(なまえ)
あなた
うん、そうだよね……
私は、修二くんの彼女。
一哉くんとは友達だし、修二くんが疑うようなことは何もなかった。
だけど多分、この雰囲気じゃ、聞いてくれない。
濡れた髪の毛が冷えきって、肌に当たって、体温をうばう。
ブルッと震えて、自分の体を両腕をクロスさせて抱きしめた。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あなたの名字さん!
(なまえ)
あなた
道路で立ち止まり、膠着状態こうちゃくじょうたいが続いていたところに、名前を呼ぶ声が響く。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
よかった、追いついて。玄関前に、忘れ物してたよ
一哉くんもまだ、髪の毛が濡れている。

しかも、濡れた制服から着替えていない。
渡してくれたのは、制服のリボン。
着替えは全部抱えたつもりだったけど、落としてしまったらしい。
(なまえ)
あなた
わざわざ、ありがとう……
一哉くんの明るい声に安心して、涙が出そうになる。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
こら、修二。お前、あなたの名字さんに、なんか余計なこと言っただろ?
名木沢 一哉
名木沢 一哉
お前が考えてるようなこと、何も無かったからな
名木沢 一哉
名木沢 一哉
断られたのに、傘には俺が無理やり入れたし、
家に入る時も、オレが引っ張っていっただけだから
名木沢 修二
名木沢 修二
お前は、口出してくんなよ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
いや、出す。お前の気が晴れないのなんか、後回しでいい。
あなたの名字さん、まだ髪の毛とか濡れてるんだから、ずっと外なんかいたら風邪引くぞ
名木沢 修二
名木沢 修二
あ……
名木沢 一哉
名木沢 一哉
早く送っていけよな
きびすを返して、逆戻りをしていく一哉くんの背中を見つめる。
途中、くしゃみをしている声が聞こえた。
(なまえ)
あなた
(リボンなんて、明日学校で渡してくれてよかったのに)
(なまえ)
あなた
(一哉くん、着替えもしないで追いかけてくれたんだ。風邪引かないといいけど)
名木沢 修二
名木沢 修二
……ごめん
名木沢 修二
名木沢 修二
頭に血のぼってた
修二くんの手が、私の髪の毛に触れる。
名木沢 修二
名木沢 修二
一哉に言われるまで、気づかなかった
(なまえ)
あなた
ううん。私こそ、軽率だったよね
(なまえ)
あなた
今度からは、修二くんと相合傘が出来るように、折りたたみ傘持ち歩くね
(なまえ)
あなた
これって、ちょっとお得な彼女みたいじゃない?
名木沢 修二
名木沢 修二
それは、俺が傘を忘れる前提だな
(なまえ)
あなた
あ、本当だ。そうだね
修二くんが、フッと口元に笑みを浮かべる。
名木沢 修二
名木沢 修二
ごめん。今度、おびさせて
(なまえ)
あなた
そんな、謝ってもらおうとか思ってないよ
名木沢 修二
名木沢 修二
……分かんない?
(なまえ)
あなた
名木沢 修二
名木沢 修二
デートに、誘ってるんだけど

プリ小説オーディオドラマ