雨は、上がっていた。
雲の隙間から、夕焼けが赤く照らしている。
……
修二くんは、何も喋らない。
元々、一緒にいてもそんなに会話があるわけじゃなかったけど、いつも以上に。
あの、今日はごめんね
ごめんって、何に対して?
えーと……、修二くんがいない時に、家に上がり込むなんて、気分悪かったでしょ?
気分? ああ、最悪
!!
ごめんなさい……
服まで借りちゃったし、部屋見られたのとかも、嫌だったよね
違う
俺が、なんで怒ってんのか、全然分かってないだろ
なんで一哉とふたりきりなんだよ。なに一緒に帰ってんだよ
ごめんなさい、傘忘れちゃって……
一哉の傘に入る必要ないだろ
うん、そうだよね……
私は、修二くんの彼女。
一哉くんとは友達だし、修二くんが疑うようなことは何もなかった。
だけど多分、この雰囲気じゃ、聞いてくれない。
濡れた髪の毛が冷えきって、肌に当たって、体温を奪う。
ブルッと震えて、自分の体を両腕をクロスさせて抱きしめた。
あなたの名字さん!
?
道路で立ち止まり、膠着状態が続いていたところに、名前を呼ぶ声が響く。
よかった、追いついて。玄関前に、忘れ物してたよ
一哉くんもまだ、髪の毛が濡れている。
しかも、濡れた制服から着替えていない。
渡してくれたのは、制服のリボン。
着替えは全部抱えたつもりだったけど、落としてしまったらしい。
わざわざ、ありがとう……
一哉くんの明るい声に安心して、涙が出そうになる。
こら、修二。お前、あなたの名字さんに、なんか余計なこと言っただろ?
お前が考えてるようなこと、何も無かったからな
断られたのに、傘には俺が無理やり入れたし、
家に入る時も、オレが引っ張っていっただけだから
お前は、口出してくんなよ
いや、出す。お前の気が晴れないのなんか、後回しでいい。
あなたの名字さん、まだ髪の毛とか濡れてるんだから、ずっと外なんかいたら風邪引くぞ
あ……
早く送っていけよな
踵を返して、逆戻りをしていく一哉くんの背中を見つめる。
途中、くしゃみをしている声が聞こえた。
(リボンなんて、明日学校で渡してくれてよかったのに)
(一哉くん、着替えもしないで追いかけてくれたんだ。風邪引かないといいけど)
……ごめん
頭に血上ってた
修二くんの手が、私の髪の毛に触れる。
一哉に言われるまで、気づかなかった
ううん。私こそ、軽率だったよね
今度からは、修二くんと相合傘が出来るように、折りたたみ傘持ち歩くね
これって、ちょっとお得な彼女みたいじゃない?
それは、俺が傘を忘れる前提だな
あ、本当だ。そうだね
修二くんが、フッと口元に笑みを浮かべる。
ごめん。今度、お詫びさせて
そんな、謝ってもらおうとか思ってないよ
……分かんない?
?
デートに、誘ってるんだけど
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