私の家の方が、学校から近いらしい。
修二くんは結局、家の前まで送ってくれた。
会話はそんなになかったけれど、少しも嫌な感じはなかった。
よく聞こえなかった。
思い出した。
修二くんは、私のことが好きだから、彼女にしてくれたんじゃない。
人前でふるのが、かわいそうだったから。
そんな優しい人だから、今も責任を感じてくれているだけ。
修二くんはまだ何かを言いたそうにしていたけど、遮るように玄関の扉を閉めた。
その場でしゃがんで、頭を抱える。
ため息をついて、立ち上がる。
涙目なったまぶたを手の甲で拭って、自室へ向かった。
*
その日から、修二くんと毎日一緒に帰るようになった。
初めて並んで帰った日、嫌な態度をとってしまった自覚があるから、どう思われているか心配だったけど、お互いにその話には触れない。
修二くんとの付き合いは、思った以上に順調……だと、思っている。
*
そして、以前とは変わったことが、もうひとつ。
昼休み、教室から逃げ出してひとりでお昼を過ごしていた空き教室。
そこに、一哉くんが頻繁に訪れるようになった。
早々に食べ終わった一哉くんは、机に突っ伏して眠り出した。
私は隠し切れない笑みを口元に浮かべて、すっかり見慣れた窓の外の景色に目をやった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。