第9話

名木沢くんは彼氏(弟)で、友達(兄)
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2022/04/16 04:00
私の家の方が、学校から近いらしい。
修二くんは結局、家の前まで送ってくれた。
会話はそんなになかったけれど、少しも嫌な感じはなかった。
(なまえ)
あなた
(緊張しなくなるまでは、まだ時間がかかりそうだけど)
(なまえ)
あなた
送ってくれて、ありがとう
名木沢 修二
名木沢 修二
明日からも、一緒に帰ろう
(なまえ)
あなた
……いいの?
名木沢 修二
名木沢 修二
いい
(なまえ)
あなた
(それは、教室で私が悪口言われてるのを、気にしてくれたから……?)
(なまえ)
あなた
(本当に、優しいな)
(なまえ)
あなた
今のところ、得してるのは私だけだね
名木沢 修二
名木沢 修二
別に、そんなことないけど
(なまえ)
あなた
え?
よく聞こえなかった。
名木沢 修二
名木沢 修二
……昼は
(なまえ)
あなた
お昼?
名木沢 修二
名木沢 修二
……誰とも約束してないなら、昼も一緒にいよう
(なまえ)
あなた
(もしかして……)
(なまえ)
あなた
名木沢く……、じゃなくて、一哉くんから何か聞いた?
名木沢 修二
名木沢 修二
……いや
(なまえ)
あなた
(聞いたっぽい……)
(なまえ)
あなた
大丈夫だよ。いじめられてるとかじゃないから
名木沢 修二
名木沢 修二
でも、俺のせいだから
(なまえ)
あなた
……
思い出した。
修二くんは、私のことが好きだから、彼女にしてくれたんじゃない。
人前でふるのが、かわいそうだったから。
そんな優しい人だから、今も責任を感じてくれているだけ。
(なまえ)
あなた
(勘違いしたら、ダメだ)
(なまえ)
あなた
(好きだから……じゃない)
(なまえ)
あなた
本当だよ。修二くんが、そんなこと気にする必要ないの
名木沢 修二
名木沢 修二
あなたの下の名前……
(なまえ)
あなた
送ってくれて、本当にありがとう。気をつけて帰ってね
修二くんはまだ何かを言いたそうにしていたけど、さえぎるように玄関の扉を閉めた。
(なまえ)
あなた
……
その場でしゃがんで、頭を抱える。
(なまえ)
あなた
(ぜっっったいに、今の私、感じ悪かった!)
(なまえ)
あなた
(親切心で言ってくれたのに……)
ため息をついて、立ち上がる。
(なまえ)
あなた
(私、近いうちにフラれそう……)
涙目なったまぶたを手の甲でぬぐって、自室へ向かった。
その日から、修二くんと毎日一緒に帰るようになった。
初めて並んで帰った日、嫌な態度をとってしまった自覚があるから、どう思われているか心配だったけど、お互いにその話には触れない。
修二くんとの付き合いは、思った以上に順調……だと、思っている。
そして、以前とは変わったことが、もうひとつ。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あなたの名字さん、今日のお弁当はどんなの?
(なまえ)
あなた
ハンバーグとオムライスだよ。あとは、他のおかずをちょっとだけ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
いーね、うまそう。ファミレスみたい
昼休み、教室から逃げ出してひとりでお昼を過ごしていた空き教室。
そこに、一哉くんが頻繁ひんぱんおとずれるようになった。
(なまえ)
あなた
(本当に、いい人なんだろうなぁ……)
(なまえ)
あなた
友達と一緒にいなくていいの?
名木沢 一哉
名木沢 一哉
ん?
(なまえ)
あなた
私、ひとりで大丈夫だよ
(なまえ)
あなた
(きっと修二くんから、私が昼休みにまで気をつかわなくていいって言ったこと、聞いたんだろうな)
名木沢 一哉
名木沢 一哉
友達なら、今一緒にいるじゃん
(なまえ)
あなた
えっ……
(なまえ)
あなた
(それって私のこと?)
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺は好きでここに来るんだけど、……邪魔?
(なまえ)
あなた
ううん、そんなことない
名木沢 一哉
名木沢 一哉
それなら、居させてよ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
ここ、なんか落ち着くんだよね
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あなたの名字さんは、変に騒いだりしないし、楽
名木沢 一哉
名木沢 一哉
修二に彼女が出来てから、ひとりになると、隙あらば女子に囲まれたりして、少し疲れたんだ
早々に食べ終わった一哉くんは、机に突っ伏して眠り出した。
(なまえ)
あなた
(いつの間にか、友達になってたんだ)
(なまえ)
あなた
(そっか……)
(なまえ)
あなた
(ふたり目だ。嬉しい)
私は隠し切れない笑みを口元に浮かべて、すっかり見慣れた窓の外の景色に目をやった。

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